読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

読んだ本

新レーベル鉄筆文庫での出版予定有り。辺見庸『反逆する風景』

辺見庸は劇薬だ。物質と情報で満たされ現状に甘え切った現代日本に生きる私の頭をガツンと殴ってくれる。 先進国に倦んでいる傲慢さ。安易に「死にたい」と口にする甘さ。良薬口に苦し? 自らの生活を振り返る。口腔いっぱいに苦みを感じる。 私を取り巻く豊…

自薦短編集が出たそうな。大江健三郎『他人の足』

心を失うと書いて「忙」しい。 最近ちょっと忙しかった。忙しければ忙しいほど心の肥やしたる本成分が枯渇する。 珍しいことに本を読む時間すら取れなかった。寝る前の読書タイムすら睡眠時間の確保に回してしまった。 (まあ学生なので参考書や論文は読んで…

中島らもの長編小説一気読み!『ガダラの豚』

久しぶりに小説の一気読みをした気がする。 中島らも『ガダラの豚』を読んだ。これがとにかく面白い。 祝日1日を読書に使ってしまったではないか。せっかくの秋晴れだったのに。 とにかく面白かった。 内容を説明するのは難しい。 主人公の大生部はアフリカ…

デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』

推理小説である。 昨年末、各種ミステリ本で話題になっていたときから気になっていた。 ネタばれ注意。推理小説に連続無差別殺人犯は似合わない。 動機のない殺人事件、たまたまそこにいたから殺した、という自白シーンでは、読者である私たちは納得しない。…

ブルータス、お前もか…シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』

ジュリアス・シーザー、ラテン語読みではユリウス・カエサルといえば名セリフ「ブルータス、お前もか」。 この言葉を有名にしたと思われるのが、シェイクスピアの悲劇『ジュリアス・シーザー』である。未読だったが、ちくま文庫のシェイクスピア全集で新たに…

時は21世紀。『それでも、読書をやめない理由』デヴィッド・L・ユーリン(柏書房)

ブログを書く人間にはブログ論好きも多いようだ。 という私もそのようなエントリーがあれば、ついつい読んでしまう。本を読むことが三度の飯と睡眠並みに好きな私は読書論も大好きで、本に関わるエッセイや新書は好きなジャンルの一つである。 先日、『それ…

アメリカの古典不倫小説『緋文字』ホーソーン

光文社古典新訳文庫から出た小川高義訳を手にとった。 この文庫本には、小説には珍しい「訳者まえがき」がついている。 ナサニエル・ホーソーンの『緋文字』は、アメリカ文学史にあって定番中の定番というべき作品である。多くのアメリカ人にとっては学校で…

対詩を読む 四元康祐×田口犬男『対詩 泥の暦』

詩の善し悪しは分からない。 国語の授業はちゃんと聞いていなかったので(授業時間=読書時間と勝手に定義し本ばかり読んでた)、詩の歴史も読み方もよく分からない。 けれども詩っていいなあと思う。 対詩というもの 対詩、という言葉を知った。『対詩 泥の暦…

『貧乏は幸せのはじまり』岡崎武志

貧乏性である。 実際貧乏じゃないか、そして貧乏から抜け出せるあてもないじゃないか、と言われたらその通りでもあるのだが、経済状況如何に関わらず貧乏性であろうと思われる。 何故なら、物心ついたときから貧乏性であったから。 具体的な理由は分からない…

今更ながら『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』を読んだ。

天の邪鬼なため話題のベストセラーは読みたくない。 現代日本を代表する作家によって書かれ、あっという間に50万部を売り上げた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』。 つい先日には、英訳版がニューヨーク・タイムズのランキングで1位であったと…

縄文ロマン! 西田正規『人類史のなかの定住革命』 

以前、國分功一郎『暇と退屈の倫理学』を読んだときに「定住革命」という言葉を知った。 その言葉やその言葉が示すパラダイムがずっと引っかかっており、この度、「定住革命」の産みの親(たぶん)、西田正規による『人類史のなかの定住革命』を読んだ。 人…

『誰にでも、言えなかったことがある。 脛に傷持つ生い立ち記』 山崎洋子

最近、ちょっとした(本人からすれば重大な)失敗をした。私は後ろ向きな人間なので、そのことについてくどくど考えている。出来るだけいろいろな視点から検討してみているのだが、気がつけば毎回同じような思考パターンにはまり、人生失敗したな、という結論…

アイスランドミステリ!アーナルデュル・インドリダソン『緑衣の女』

目が覚めて、大きなお屋敷で起こるどろどろ殺人劇が読みたいと思った。 金田一耕助でもいいが、舶来物でもいい。 日曜日の朝。 しかしそのような正統派推理小説は手元になかったので、現代的なミステリである『緑衣の女』を読んだ。 アイスランド・ミステリ…

同時読み! 森博嗣『幻惑の死と使途』『夏のレプリカ』を読み返す。

中学生の頃、森博嗣にはまっていた黒歴史を持つ。毎週末図書館へ通いノベルスを借りた。 S&Mシリーズ、Vシリーズ、四季四部作を読み、熱病が覚めた。 高校受験の勉強等が始まり、森博嗣と私との蜜月は終わった。その後は、シリーズものでない小説やエッセ…

ちょっとマイナーな海洋冒険小説を読む J・メイスフィールド『ニワトリ号一番のり』

ときどき児童書というか、児童文学を読みたくなる。 とはいっても「子ども向けに書きました!」というような本(学校を舞台に子供が活躍する、みたいな)ではないもの。 対象年齢でいえば、小学校高学年や中学生向けの本になるのだろうか。中学生向けに書かれ…

別に検索したくはないけれど。東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』

読んだ。面白かった。いろいろ考えた。 部分的には納得できることばかり。 ただし、全体を見た時、アレと思うところがある。目次は以下。 0 はじめに 強いネットと弱いリアル 1 旅に出る 台湾/インド 2 観光客になる 福島 3 モノに触れる アウシュヴィッツ 4…

ニート小説 埴輪雄高『死霊』

埴輪雄高『死霊』、講談社文芸文庫三冊を読了。 気合いを入れて読み始めたが、意外とすんなり読めた。普通に面白いと思う。 通読に2か月を要したが、これは『死霊』を読みながら別の本に浮気していたため。 が、内容を理解できたかと言われると微妙。 それか…

「知ること」「考えること」について考える。レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

『華氏451度』を読んだ。有名な作で題名のみ知っていた。 近未来を書いたブラッドベリの中長編である(解説には中編とあったが長編でいいと思う)。 テーマは「焚書」。後半は戦争も出てきて、なかなか重い内容である。 「本の所持」が「法律違反」となった世…

自由度高すぎなスリラーに騙される 『駄作』ジェシー・ケラーマン

最終章を読みながら嫌な予感を感じていた。『駄作』ジェシー・ケラーマン。 酷いタイトルだ、と思う。何故好き好んでこんなタイトルの本を読まないといけないのか。 原題は『Potboiler』。訳者あとがきによると「金目当ての通俗小説、もしくはそうした作品を…

海小説!ジブリ『思い出のマーニー』の原作小説を読んでみた

今週のお題「海か? 山か?」物心ついたときから海が好きだった。船も魚もひっくるめてとにかく大好き。 なので、海か山かと聞かれたら「海!」と即答する。 それは現実でも物語でも変わらない。 (ちなみに我が田舎町には海も山もある。魚美味しい。山には…

SF初心者の読む『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

SF小説をあまり読んだことがない。 なぜならばSFを読む習慣がないから。 読書において習慣というものはとても大事だ。 本屋へ行き、無意識のうちに推理小説を探す一方でSF小説は無視している自分がいる。 いくら本屋へ通ってもSF小説に出会わないわけだ。二…

立派に生きたいと思った 深沢七郎『楢山節考』

今日は某就職試験の合格発表があった。 発表時間までの焦る気持ちを落ち着かせようと、とりあえず本を読む。 名作を読んでおこうということで買った一冊。 深沢七郎『楢山節考』。第一回中央公論新人賞の当選作である。有名だから読んでおこう、という浅はか…

犬が語るミステリー 『ぼくの名はチェット』スペンサー・クイン

犬が好きだ。 くるくるとその場を回ったり、じっと窓の外を覗いている姿を見ると、こいつらは何を考えているのだろうかと思う。 ああ、犬と話せたらいいのに。 でもきっと人が犬のことを好きなのは犬たちが決して言葉を話さないからだ。 言葉の非万能性を教…

中島らものエッセイを読む 『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』

中島らも『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』を購入。中島らもという書き手を知ったのは、中学生のとき、母親の本棚を覗き見したときであった。 『心が雨漏りする日には』という本を見つけた。当時『症例A』などの精神病系ミステリやサスペンスを好んでいた…

とにかく自由で面白い小説『不滅』ミラン・クンデラ

読み終えた瞬間、頭からもう一度読みたい欲に駆られる本がある。 ミラン・クンデラの『不滅』。 これ、すごい。生涯手放さない本リストに追加した。 ちょっとした不注意で、本の地をボールペンで汚してしまって大変後悔している。面白い本に出会うと、その面…

モーム『雨』 書かれなかった部分を妄想してみる。

先日買ったモームの短編集から(買った日のブログはこちら)すべての本には「謎」が潜んでいる。 私たち読者はその謎の正体を知りたいがために本を読み進む。推理小説なんてその典型だろう。 探偵の謎解きが始まったとき、私たちは彼の言葉を一言も聞き逃すま…

戦前×上流階級×同性愛 谷崎潤一郎『卍』

積読山の消化。 途中まで読み、放置していた本を手に取った。 谷崎潤一郎『卍』。前半はただの不倫小説(?)だったのだが、後半になるにつれ、事件性、物語性が増していき、結末は、まさかそこまで行くとは、というような地点にあった。 放置していたのが嘘…

『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』 矢部武

人は歳をとる。 私もあなたもいつかは老人となる日がやってくる。もちろん老人になる前に亡くなる可能性もあるが、祖父母が存命であることや医療技術の進歩等を考え合わせると、あと50年ぐらいは軽く生きてしまう気がしなくもない。50年か……さて、50年後、私…

悪夢な短編集 ブライアン・エヴンソン『遁走状態』

新潮クレストブックスに面白そうな題名を見つけた。『遁走状態』。表紙は、頭と顔を包帯でぐるぐる巻きにした男のイラストである。 裏表紙には「どこまでも醒めた、19の悪夢。」「ホラーも純文学も超える、驚異の短編集」とのコピー。 さらに、決めてとなっ…

今流行りのアドラーを読んでみた!

どうやら世間ではアドラー心理学が流行っているようだ。きっかけとなったと思われる岸見一郎著『嫌われる勇気』は我が田舎町の本屋でも、入口付近に山積みされている。 6月1日16時現在、『嫌われる勇気』のアマゾンのカスタマーレビューは294件、評価は5つ星…

60年前のニューロティック・スリラー『悪魔に食われろ青尾蠅』ジョン・フランクリン・バーティン

あとがきや解説は本編を読み終わってから読む派である。本編を読み終えて解説を読み、驚いた。 本作が書かれたのは60年近くも前であった。本編読書中、まったく古さを感じなかった。 ニューヨークの街中で、タクシーと馬車が共存していたが、きっとアメリカ…

コンデジ PowerShot s120買った。 『大人の写真。子供の写真。』 新倉万造・中田燦

最近カメラを買いました。 といっても所謂コンデジです。canon s120というやつ。カメラには詳しくないので善し悪しはイマイチ分からないが、今のところ満足。今の田舎町に住むのも、もう1年を切ってるんだな、とある日思った。 大学を卒業したら、私はこの…

学生時代に読むべき本とは? 埴谷雄高『死霊 Ⅰ』

はてなさんに先週のお題で、先週の記事を取りあげて頂きました。ありがとうございました! 学生時代に読むべき本? 学生のうちに読んでおいた方がよいのではないか、と思われる本がある。 有名な作品で、かつ、読むのに時間がかかりそうなもの。 学生時代の…

人生初の廃墟本。 『総天然色 廃墟本remix』 中田薫・文 中筋純・写真

何が「総天然色」なのか、何が「remix」なのか。 そう思いながらも、手に取りペラペラめくるうちに、何かがピンときて気づいたら購入していた。 疲れていたのかもしれない。 が、読む。 興味深い。いや、感慨深い。総天然色=オールカラー? 廃墟に興味はあ…

『解錠師』 スティーブ・ハミルトン 

このミステリーがすごい! 2013海外編、および、週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門で第1位を獲得した有名作。ようやく読みました。 ミステリ? 狭義のミステリの定義に従えば、本書は、ミステリではない。 解かれるべき謎はない。 しかし、犯罪はある…

ミラン・クンデラ『別れのワルツ』

ミラン・クンデラにハマろうとしています。ミラン・クンデラという名よりも、『存在の耐えられない軽さ』の著者と言った方が通じるだろうか。 私自身も、彼のことは、ボスミア出身で亡命経験があるということだけしか知らない。 しかしそれで十分。彼の著作…

日本に生まれたんだから幸せに思え?『世界「比較貧困学」入門 日本はほんとうに恵まれているのか』 石井光太

ネット上でもリアルでも、経済的な愚痴をこぼす人に対して、「でも、アフリカなんかに比べたら、日本に生まれただけで幸せなんだから」という人がいる。 言われた方は、確かに日本は経済大国でもあるので、「それはそうだけど」と答えるしかない。 言いたい…

読んだらやっぱりすごかった! 『枯木灘』中上健次

中上健次『枯木灘』を読んだ。 面白かった。はじめは複雑な人間関係を追いながらゆっくりと読み進めていたが、進むうちに勢いがつき、結局一昼夜で読了。 中上の小説を読むのは初めてであったが、私は彼の作品が好きだ、と確信した。 現代の作家が逆立ちして…

『~果てしない孤独~独身・無職者のリアル』 関水徹平・藤原宏美

スネップ、という言葉がある。というか近年開発された。本書は、そのまだ新しい概念「スネップ(孤立無業者)」を、実例を交えて解説、紹介する本である。 スネップ(SNEP)とは、経済学者の玄田有史教授が提唱した言葉で、文字通りには、孤立した(Solitary…

『昔も今も』サマーセット・モーム

人生2冊目のサマーセット・モームである。 だいぶ以前のことだが東北へ行った際(宮沢賢治は好きですか? 花巻・宮沢賢治記念館に行ってきた! - 読書録 本読みの貪欲)、電車に揺られながら読んだ本である。 雪景色を見つつ、ルネサンス後期のイタリアに思…

超然として生きる 『妻の超然』絲山秋子

面接で高ぶった精神を落ち着かせようと文庫本を買った。 『妻の超然』絲山秋子。 軽い気持ちで読み始め、確かに読める本なのに、軽く読み過ごすだけでは終われない何かを感じ、驚いた。 軽く読み過ごすだけでは終われない。 本書は、現在の個人の在り方を「…

レールのない時代を生きる『リアル30’s ”生きづらさ”を理解するために』

毎日新聞に連載された記事とその記事に対するtwitterの反響をまとめた一冊。 連載は第4部まであったが、本書では前半の1部と2部が取りあげられている。 第1部 働いてる? 第2部 変えてみる? 本書で取り上げるのは1978-1982年ごろに生まれ、バブル経済を…

『人間の土地』  サン=テグジュペリ 解説は宮崎駿

ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ。 (p7) 壮大なタイトルである。そして『人間の土地』はこのような壮大な書…

『死にたくないが、生きたくもない。』 小浜逸郎

世の中には秀逸なタイトルを冠した本がある。 『死にたくないが、生きたくもない。』、この題名を見た時、まさしく衝撃を受けた。自らの心情をぴたりと表わす言葉がそこにはあった。 「死にたくないが、生きたくもない」 思わず口の中で転がしたくなる。語呂…

クーポンで本を買う 『哲学入門』 戸田山和久

東京駅のいくつかの店舗で使えるクーポン券を頂いた。 額にして1000円分。 一人暮らしの学生にとってはなかなか嬉しいお小遣いである。 クーポン券を使える店舗の中に書店を見つけ、1000円分すべてを書籍に充てることを決意した。しかし実際書店へ行くと1000…

林芙美子が書くインテリ無職青年の生活 『魚の序文』

金銭的に豊かな生活と貧しい生活、どちらに憧れを感じるか。人は皆、豊かな生活を目指す。ということが現代日本では暗黙の了解となっているように思う。 だからこそ大学生である私が直面している就活戦線は苛烈である。 誰もがより良い就職先を目指して努力…

美しいものには毒がある 『偏愛文学館』倉橋由美子

好き嫌いという次元を超越して凄いと感嘆するしかない作家はそんなに多くない。 倉橋由美子は私の貧弱な読書録の中でも一段と際立った場所で存在感を放っている。彼女の物語は読むたびに圧倒させられる。既存の小説のかくあるべしという規格から二回り、三回…

『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』 ジュノ・ディアス

良い本はその一冊の中に様々な要素を内包している。今更ながら読んでみた。 とにかく面白かった。この本を一言で言い表すことは難しい。 「とにかく読んでみて、すごいから」 誰にも勧めたくなる本、と言うのが一番かもしれない。 小説好きを自認する方は必…

北森鴻を知っていますか 『孔雀狂想曲』再読

私はラノベや歴史小説を読まない。 何故ならラノベや歴史小説の大半がシリーズものだからだ。 私はシリーズものの小説に手を出さないよう自制しつつ読書生活を送っている。 読めば面白いことは分かっている。 そして私は、一巻目を読めば、必ず二巻目も読む…

『精神のけもの道』 春日武彦

吉野朔実=漫画、という背表紙の文字に惹かれた。 吉野朔実、『本の雑誌』に読書エッセイ漫画を連載している漫画家であり、『悪魔が本とやってくる』といった作品がある。 そして私は密かな吉野朔実ファンである。 この本は春日武彦の精神エッセイ一編に、吉…