読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

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読んだ本

『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』貴志謙介【読書感想】

真っ黒な背景に赤い文字で題名が書いてある。『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』はそんな本である。 NHKスペシャル「戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946」を書籍化したノンフィクション。著者である貴志謙介さんはこの番組のディレクターである。 番組…

100刷達成のベストセラーSF小説 『星を継ぐもの』ジェイムズ・P・ホーガン【読書感想】

その本の題名はだいぶ昔から知っていたように思う。ジェイムズ・P・ホーガン著『星を継ぐもの』。インターネットで「おすすめ SF」などと検索するとまずヒットする有名作である。いつか読まないとなと思いながらも、読まずにいた脳内積読本の一つであった。 …

旅行の準備、本の準備。『活字のサーカスー面白本大追跡ー』椎名誠

旅行で一番楽しいのは準備をしている時間である、というような事を時々聞く。 確かに、押入れの奥から旅行用のカバンを引っ張り出してきたり、何を着ていこうか迷っていたりするうちに、旅行への期待は否が応でも高まってくる。そんな準備の中でも、一番悩ま…

森博嗣さんの新書エッセイ『ジャイロモノレール』(森博嗣著)【読書感想】

森博嗣の新書を2冊続けて読んだ。趣味的な夢の効用を解く『夢の叶え方を知っていますか?』と2018年の新刊『ジャイロモノレール』の2冊である。本のテーマとしては2冊とも通底しており、本当に自分の好きなことをしよう、ということである。 本当に好きなこ…

ディストピア小説を読む ユートピアとしての『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー【読書感想】

ディストピア小説として名前だけは以前から知っていた『すばらしい新世界』。19世紀生まれのイギリス人作家、オルダス・ハクスリーによるSF小説である。1932年の作である。この度、光文社古典新訳文庫で読みました。訳者は黒原敏行さん。 工業化が進んだ2540…

家電の断捨離 稲垣えみ子『寂しい生活』【読書感想】

稲垣えみ子著『寂しい生活』というエッセイを読んだ。著者の本を読むのは2作目で、1作目は今年のはじめに読んだ『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』である。家電なし生活を送る著者の食生活についてのエッセイであり、著者の軽妙な語り口に乗…

図書臨時増刊2018『はじめての新書』

出版前から気になっていた冊子をようやく手に入れることができた。岩波書店のPR誌である『図書』の臨時増刊号『はじめての新書』である。岩波新書創刊80年を記念して作られたA5サイズの小さな冊子である。インターネットを通してその存在は知っていたが、地…

ディストピア小説を読む 『侍女の物語』マーガレット・アトウッド【読書感想】

ディストピア小説を読みたい。夏の終わりにふと思った。それから二ヶ月。ようやく一冊を読み終えた。カナダ人女性作家マーガレット・アトウッドによる『侍女の物語』。 初期のギレアデ政権時代に「侍女」として生きた一人の女性が残したテープを文書化したも…

半額惣菜と「きょうの料理」

今週のお題「最近おいしかったもの」 今朝のこと。洗い物をしていた際、水道水に冷たいと思っている自分に気づき、ああ、秋だなと思った。日が暮れるのも早くなってきた。秋本番である。 今週のお題「最近おいしかったもの」。 秋には美味しいものが沢山ある…

ままならない人生を生きる ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』【読書感想】

この小説の存在を知ったのは、数年前、インターネット上でのことだった。いくつかの読書ブログで絶賛されていたのだが、それらのオススメ文句が「地味な人生を書いた小説だが、それが良い」との主旨であり、興味を持った。ストーナーとは、その地味な人生を…

ディストピア小説を読む 『消滅世界』村田沙耶香著【読書感想】

村田沙耶香著『消滅世界』を読んだ。何が消滅した世界の小説なのか。帯にはこうある。 世界から家族、セックス、結婚…が消える 舞台は人工授精技術が進み、セックスではなく人工授精技術で子供を生むことが普通になった、パラレルワールドな日本(近未来の日…

関西人ですが『東京防災』買いました

今週のお題「わが家の防災対策」先日の台風はすごかった。台風通過日は、仕事を早退して、雨戸を締め切った部屋に籠っていた。お昼過ぎ。風は一層強くなり、部屋が揺れた。雨戸には何か重いものが当たる音が幾度かし、外の様子が気になったものの雨戸を開け…

米澤穂信『満願』【読書感想】

ある日、米澤穂信『満願』を原作とするドラマの宣伝を見た。そういえばこの本を持っていたな、長編ミステリかと思っていたが短編集だったのか、と思った。せっかくなので積読山から単行本を探し出し、開いてみる。6つの短編が収められており、ドラマ化した…

国分功一郎『暇と退屈の倫理学』を再々読中【読書日記】

国分功一郎『暇と退屈の倫理学』を再々読している。はじめて読んだのは、発売されてすぐの頃。本書は話題となっており、新聞の書評等にも取り上げられ、書店でも平台で並べられていたように思う。流行に流されやすい私は、「倫理学」という言葉の重々しさに…

【読書感想】はじめてのスパイ小説 ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』

ある日本屋へ行くと、文庫本コーナーに「ハヤカワ文庫冒険スパイ小説フェア」なる棚ができていた。外交ジャーナリストであり、かつ作家でもある手嶋龍一氏が選書した冒険スパイ小説たちが並んでいる。黄色の帯が、暗い表紙絵のスパイ小説たちを鮮やかに彩っ…

【読書感想】小池昌代編『恋愛詩集』 恋愛詩を超えた恋愛詩たちをよむ

大好きな詩集、小池昌代編『通勤電車で読む詩集』の続編、同編者による現代詩のアンソロジー『恋愛詩集』を買ったのは一昨年の夏の終わりだったと思う。そしてそれは予想通り、私の読書の歴史の中の2016年を代表する一冊となった。 買ってから約二年がたった…

トルストイ『戦争と平和』が面白い!5/6巻読破!【読書感想】

昨年から、岩波文庫の新訳でトルストイの『戦争と平和』を読んでいる。途中で長い休憩を挟みながらも、ついに5巻目。読み出すとやはり面白い。4日ほどで文庫1冊を読んでしまった。物語が進めば進むほど面白くなってきた。 戦争も恋愛もついに佳境。登場人物…

平日、プール、読書。村上春樹訳『高い窓』レイモンド・チャンドラー【読書感想】

暑い。この1週間で急に湿度が上がり、一気に夏らしくなった。気がつけば6月が、2018年の半分が過ぎた。先の金曜日、休日出勤の代休だった。ぽっかりと空いた平日に何をしようか。そうだ、プールに行こう。あまりの暑さ、蒸し暑さに、水浴びできたら気持ちい…

#挫折本を読み通した!『族長の秋』ガルシア=マルケス【読書感想】

ゴールデンウィーク頃だろうか。ツイッター上に「#挫折本」なるハッシュタグのついたツイートを見かけた。読むことを挫折してきた本を告白し合おう、という趣旨のハッシュタグであり、世紀の名作に挫折した人間は私だけではないことがよくわかるタグである。…

森博嗣『私たちは生きているのか?』読了。【読書感想】

最近、森博嗣のWシリーズを履修している。2018年も半分が終わろうとしているが、今年の読書目標「SFを読む」が、ぜんぜん達成出来ていないので、読みやすいしいずれは読むことになると思われる森博嗣の講談社タイガ文庫を、梅雨の合間の晴れた日曜日に引きこ…

魚図鑑の魅力 『小学館の図鑑Z 日本魚類館 精密な写真と生地の写真と詳しい解説』【読書感想】

魚好きだ、と、言っている割には、私の本棚には、いわゆる総説的な魚図鑑がなかった。なので小学館から大人向けの魚図鑑が出ると聞いたときには、1も2もなく予約した。小学館の図鑑、小さい頃は夢中で読んでいた。ちなみに友人の子供の1歳児も、小学館の図鑑…

一人称で語るお前、お前は誰だ…? 神林長平『絞首台の黙示録』【読書感想】

ある日の仕事中、本を買おうと思い立った。ストレスがたまっていた。ストレスの溜まると本屋に行きたくなる。 ストレスというのは仕事だけが原因では無いことは、薄々わかっていた。人生に対する不全感。あーなんでこうなるんだろうなぁ自分の人生。何がやり…

幸せな金曜日。少女漫画な気分。【読書日記】

今日は金曜日、定時で帰れた。 なんだかどこか浮足立った気分で、スーパーでキムチ鍋の材料とビール(第三のビールでも発泡酒でもなくてビール)を買った。 あれもしかして私今とっても幸せなのではないのと思ったら、ますます幸福感が溢れてきた。人の感情は…

ストレスと本への衝動【読書日記】

ストレス解消法は世の中にいくつもあって、きっと人それぞれお気に入りの方法があるだろう。 どうやら私にとって、それは本の衝動買いであるようだ。 最近、そこそこストレスフルな生活を送っているのだけれど、びっくりするくらい部屋の中の本が増えている…

小説のための小説『1000の小説とバックベアード』佐藤友哉【読書感想】

小説をテーマにした小説を読んだ。佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』。 著者、佐藤友哉の本を読むのは初めてだったが、これが面白かった。一気読み。昨日は台風が来るとのことで、引きこもって本を読んでいたのだが、おかげで退屈することなく一日を過…

私は幸せなのか。アラン『幸福論』【読書と人生】

入籍当日。遠距離の婚約者に会うため、バスと電車を乗り継ぐ中、アラン『幸福論』をパラパラと読んでいた。 プロポ(哲学短章)というそれぞれ独立した小編が積み重なってできた本書は、どこからでも読めて、移動中に少しずつ読むのにはもってこいだ。岩波文庫…

すべては「普通」のために。『コンビニ人間』(村田沙耶香著)【読書感想】

読みたい読みたいと思っていた本をついに購入。単行本の小説を買うのは久しぶりだ。 第155回芥川賞受賞作、村田沙耶香『コンビニ人間』。帯にはこうある。 36歳未婚女性、古倉恵子。 大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。 こ…

『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(岡田尊司著)【読書感想】

私は極度のめんどくさがりである。 しかもその度合いが年々上昇している。仕事が面倒くさいのはともかくとして、掃除や洗濯といった家事も、趣味友達に会うことも、ブログを書く程度には好きな読書も、はたまた食事をすることさえも面倒くさい、と思うことが…

ヒトには個体差がある『死ぬくらいなら会社辞めればができない理由』ゆうきゆう【読書感想】

最近本屋でよく見る本。インパクトのある表紙とタイトル。 ぷらぷらとネットの海を歩いていると、本書が電子書籍でも出ていることを知り思わず購入。 ページを開いてから、冒頭の漫画を読んだことがあったことに気づく。 ああ、あの漫画か!というような再会…

週末読んだ本【読書日記】

土曜日。久しぶりに一日中本を読んでいた。 このごろでは滅多になくなってしまったことだ。 記念に、というわけでもないが、今週末に読んだ本を記録しておこうと思う。 『ずっとお城で暮らしてる』シャーリー・ジャクスン 桜庭一樹のエッセイで紹介されてい…