読書欲の肯定 『本を読んだら、自分を読め』小飼弾
読んでいて気持ちの良い本、というものがある。
大抵、自分の価値観や意見を肯定してくれるような本である。
本書『本を読んだら、自分を読め』は読書好きな読者にとって、とても気持ちのよい本だ。
なぜなら、自らの読書欲を徹底的に肯定してくれるからだ。
しかも有名ブロガーのDan氏から。
私にとって読書という行為には後ろめたさが付きまとう。
本を読むことは良いことだと育てられた。
世間にも読書をもちあげる言論はあっても、批判する言論は少ない。
だから本ばかり読んで育った。
読書の習慣は、やがて読書に対する欲望に変わる。
本を読みたい。
金があれば引きこもってひたすら本を読んでいたい。
想像するだけでも甘い、私と本の蜜月。
だが、本当に本ばかり読んでいてもよいのか、との考えがちらと脳裏をかすめる。
周りを見回せば、本を読んでいる人間は少数派。
読書とは暗く、内向的な行為であり、ツマラナイ人間がするものだ、本を捨てよ、町に出よ。
しかし著者は読書を強く勧める。
ネットでつながったり、周りに流された「リア充」な生活をするくらいなら、本を読め。
本ばかり読んでいる私はその言葉に救いにも似た思いを覚える。
だから、読書に対する投資を惜しむな、という耳に痛い言葉すら気持ちが良い。
一方で彼は言う。
「本は自分を救ってはくれません」
本を読んで、「自らを救う仕組み」をつくる事が重要であるそうだ。
「自分を読め」、即ち、思考力をつけろ、と。
現実逃避や時間をつぶすためだけにだらだらと本を読むだけの私は、やはり今までの自分と本との関係を見直すべきなのかもしれない。
本に読まれているだけではないか。
たまには自分に問いかけてみる。