読書録 地方生活の日々と読書

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宮沢賢治は好きですか? 花巻・宮沢賢治記念館に行ってきた!

冬のある日、宮沢賢治記念館へ行ってきた。

新花巻駅からバスで二つ目の停留所の山の中。
さらに停車場から十五分ほど坂を上った山の上にその建物はある。
冬の岩手。
花壇や日時計は雪に埋まっている。
しかし晴れているため思っていたほど寒くはない。
雪がゆるみ、木々の枝から水滴が落ちる音がする。

山を登ったころには息が上がっていた。
息を整えつつ建物に入る。
料金は350円。
パンフレットを貰う。

本館の展示は、宮沢賢治をめぐるその環境・信教・科学・芸術・農村・総合・資料などの展示からなり、写真パネルなどの約400点、さらに映像で視覚的に賢治の世界に親しむことができる。
 (パンフレットより)

ここに来て初めて知った、賢治の姿の一部を紹介したい。

多作な賢治

一番驚いたこと。
宮沢賢治は多作である。
注文の多い料理店』『雨ニモ負ケズ』『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『春と修羅』『よだかの星・・・・・・
有名どころだけでも結構ある。
いやしかし。
38歳の短い生涯に作った作品の数はなんと。

詩800点、童話100点、短歌1000点。

だという。
こんなに詩も童話もあるのか。
図書館で全集がずらっとならんでいるわけだ。
短歌、とも思ったが、もともと中学3年生の時に短歌を作ったのが文藝活動の最初らしい。

ダヴィンチ的な賢治

ダヴィンチ的=多才である。
賢治と聞くと、童話作家農業学校の先生であったというイメージが浮かぶ。
しかし彼はいろんなことに才能を発揮している。
科学者として、教師として、楽家として、宗教人として。
賢治が作曲していたことも初めて知った。
劇も書けば、教材も作るし、肥料の調整も出来れば、庭のデザインもする。
もちろん、セロも弾く。
絵だって書く。
それらの才能を持ちながらも、一農民として鍬も持つ

賢治の宗教

本記念館には、自筆原稿の写真が多く展示してある。
あんまり字は綺麗ではないな、鉛筆で書いていたのかと思って見ていたところ、雨ニモ負ケズの前で思わず足を止めてしまった。
小さな手帳に大き目な文字で書かれた詩。
長い詩ではないが幾ページかに及んでいる。
そして詩が終わった次のページ。

南無妙法蓮華経

という文字がびっしりと書かれているではないか。
病床で書いた詩である。

雨ニモ負ケズ
風ニモ負ケズ
丈夫ナカラダヲモチ

彼はどんな思いでこの詩を書いたのだろう。
詩は叶えられない願望だったのか。
人のために尽くしたいと思いながら、両親の世話になる辛さ。

賢治の純真さは、まるで中学生のようだと思った。
彼の書く童話がどこか懐かしいような思いを想起させるのは、かつての少年少女だったころの自分が見ていた世界を思い出させるからかもしれない。

世界の賢治

彼の童話は世界で愛されている。
死後二年後にはもう訳されていた。
風の又三郎の歌の一部がいろいろな言語で展示されていて面白い。
彼の物語が世界で受け入れられるのも、彼の書いた世界が人類共通の「何か」、子どもであったころがあった人間には確かに経験したことのある「何か」を描いているからだろう。

一番好きな童話『水仙月の四日』

ところで私は、少しマイナーかもしれないが水仙月の四日』が1番好きだ。
残念ながら記念館では挿絵の一部が展示されているにすぎなかった。
それでも好きなものは好きだ。
主人公の雪童が口ずさむ歌は今でも覚えている。
雪を踏みしめながら歩かなければならないとき、そんな時に強い風が吹こうものならば、ついそこで雪狼たちが戯れているかのような気がする。
雪童と雪狼に孤独な雪道通学を慰められるのも、悪くはない。
まあこのような陰気な趣味は、賢治の書く物語たちにはあまり似合わないけれど。

そういえば一番最初にお小遣いを貯めて買った本は、子ども向け文庫本『注文の多い料理店だった。

みなさん、賢治は好きですか。
私は大好きです。