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読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

『HACHI 約束の犬』 ラッセ・ハルストレム監督

観た映画

世の中には二種類の人間がいる。
すなわち犬が好きな人間と猫が好きな人間だ。

本と同じぐらい生き物が好きです。

昔から動物が好きだった。
小学校低学年の時、誕生日プレゼントに「いぬとねこの図鑑」を買ってもらった覚えがある。
当時はアパート住まいだったため、犬も猫も飼えなかった。
週末に行くホームセンターで小動物や熱帯魚を眺めることが最大の楽しみだった。

犬猫どちらかを選べと問われれば、私は犬と答える。
ホームセンターで小動物を眺めていたころから、ずっと犬を飼いたかった。
飼ってもいないし、飼育できるあてもないのに、犬のしつけに関する本を買ってもらい読み込んでいた。
賢い忠犬が欲しかった。
帰巣本能が強く、命令に忠実で、いざという時に悪者から守ってくれる犬がほしかった。

犬が出てくる本や映画には、未だに惹かれるところがある。
近年、海外で日本犬が人気らしい。そりゃあそうだろう。
表情豊かな日本犬が嫌いな犬好きはそんなにいないだろうと思われる。
さらに人気の発端のひとつに「ハチ公」の物語が挙げられていた。
アメリカで秋田犬を使った映画が撮影されたのだ。題名もずばり『HACHI 約束の犬』
よく知った物語が(教科書にも載っていたような)どうなっているのか気になり(90分もどう持たせるのだろう)、DVDを観た。

舞台はアメリカ。役者もアメリカ人。でも犬は秋田犬。

秋田犬は本当の秋田犬。
アメリカンアキタじゃなくて、ジャパニーズアキタです。
ハチは捨て犬設定で、主人公が仔犬を拾うところから物語がスタートするのだけれど、この仔犬がものすごく可愛い。
無条件で可愛い。
大人になってしまうのが残念なぐらい可愛い。
が、映画内で時間は進み、小さな秋田犬は大きな秋田犬となっていた。
設定はアメリカだが、ストーリーは捻りもない、ど直球な「ハチ公」物語である。
主人公が倒れる日、ハチが主人公を仕事に行かせないようボール遊びで引き止めたりもするが、定石通り主人公は出先で倒れ、ハチはその日から死ぬまで主人公の帰りを駅で待ち続ける。
それだけ、といえばそれだけの物語である。
しかし、これが、意外と飽きない。冗長さもない。観る前は子ども騙しではないかと疑っていたが、これがまったくそうではない。
ハチの健気さにいつの間にやら、映画に没頭していた。

本当に犬はずるい。
もしこれが人間同士であったら。
行方不明になった人を、いつか帰ってくるかもしれないと待ち続ける人。
それはそれで美談になるだろう。
でもハチ公ほど万人受けすることはないと思う。
待つぐらいなら積極的に探せよ、待つよりほかにやることがあるだろう、とシニカルに捉える人や健気さの当て付けのように不快に思う人もいるだろう。
言葉を話せない犬だからこそ、人間社会に生きず「飼い主―犬」という狭い世界に生きる犬だからこそ、この物語は多くの人に優しく受け入れられるのだ。

犬は人がなかなか成しえないことを成す。
人を心から愛すること。信じること。
シンプルだからこそ、複雑な世界を複雑な心で生きていく人間には難しい。

どんなに不細工でも、人は飼い犬を愛す。
自らを愛するものを愛さない人はいない。
人が人を愛するのが難しいのは、人には余分なものが多すぎるからかもしれないと思った。

犬の映画を見、犬について書いていたら、犬を飼いたくなった。
もちろん現状では飼えないので、代わりに犬の本を買いに行った。
ジョン・ホーアンズ著『犬が私たちをパートナーに選んだわけ 最新の犬研究からわかる、人間の「最良の友」の起源』
さわりの部分を読んでいるが、なかなか面白い。

HACHI 約束の犬 [DVD]