読書録 地方生活の日々と読書

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学生時代に読むべき本とは? 埴谷雄高『死霊 Ⅰ』

 はてなさんに先週のお題で、先週の記事を取りあげて頂きました。ありがとうございました!

学生時代に読むべき本?

 学生のうちに読んでおいた方がよいのではないか、と思われる本がある。
 有名な作品で、かつ、読むのに時間がかかりそうなもの。
 学生時代の膨大な暇さとエネルギーを持ってしてしか立ち向かえそうにないもの。
 いつか、年をとるまで生き続けることができたとして、その時にふとまた読み返して何か実りのあるもの。

 いつまでも学生ではいられないことに対し自覚的になったときから、そのような本を意識的に手に取っている。挫折したものも多い。読み通し、意味は分からないものの読み終えたという達成感に満たされたものもある。もちろん、意外と面白かったものもある。


 埴谷雄高『死霊 Ⅰ』を読んでいる。ネット上の「一番偉大な作家は?」「今まで読んで影響を受けた作品は?」という問いの答えとして時々上がっているので気になっていた。

 昨日、郊外の大型書店に行った。どこかで無くしてしまったドエトエフスキー『悪霊』の下巻新潮文庫版)を買い直そうと思ったのだ。が、書店で探したところ『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』はあったものの『悪霊』は置いていなかった。書店員さんに尋ねようかとも思ったが、これも一種の運命と思い、代わりに別の本を買うことにした。
 そこで『死霊』を買った。とりあえず第一巻だけ。帯にはこうある。

20世紀の傑作。わが国初の形而上小説。

 読んだ。
 ついさっき読み終えた。

分からない。

 読んでわからない小説、というものがある。私は馬鹿なので、そのような小説にあたることがよくある。「形而上」小説なんて、帯に書いてあるような本を、一読して分かると思った方が間違いだった。
 分からない。
 「形而上」という言葉を知ったのは中学に上がるか上がらないかぐらいの時だったように思う。その言葉を知ってから10年が経つが、その概念やその概念上で示された物事が分かったことはない、気がする。美術館でキリコの絵を見て画集まで買ったが、ただ眺めるだけしかできなかったではないか。
 「虚体」とは何か。
 「自同律」とは何か。
 「不快」とは何か。
 私は、文章を読み進めるしか出来ない。

 自身が分からないもの、理解しえないものに出会った時に、どのように判断するか。
 ツマラナイと一蹴するのか。
 自分の馬鹿さ加減に、自己嫌悪に陥るのか。
 分からないものを分からないものとして、受容し理解できるよう努めるのか。
 本書の救いは、まだ二巻分も先があることだ。先を読めば、理解を深めることができるかもしれない。だって一巻400ページで作中時間は一日も過ぎていないのだから。私はたぶん明日、書店へ行くだろう。この『死霊』の二巻目を買うだろう。

 でも、ところで、もしかしたら、ドエトエフスキーの『悪霊』を先に読了すべきかもしれない。
 冒頭部に『大審問官』に関する叙述があるし(イワン兄さんのアレですよね?)、題名的にもオマージュ?、ドエトエフスキーなんて読んでいて当たり前という前提で書かれている……のかもしれない、だとしたらどうしよう。


8/7 追記 読みました!

dokusyotyu.hatenablog.com

読書録

『死霊』
著者:埴谷雄高
出版社:講談社講談社文芸文庫
出版年:2003年(底本は1981年出版)
 
死霊(1) (講談社文芸文庫)