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読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

コンデジ PowerShot s120買った。 『大人の写真。子供の写真。』 新倉万造・中田燦

最近カメラを買いました。
といっても所謂コンデジです。canon s120というやつ。カメラには詳しくないので善し悪しはイマイチ分からないが、今のところ満足。

今の田舎町に住むのも、もう1年を切ってるんだな、とある日思った。
大学を卒業したら、私はこの町を出ていくだろう。
観光で来ることはあっても、もう二度と住むことはないだろう。
そう思うと、なんだか寂しくなった。

私はこの町が嫌いではない。
映画館では大した映画を上映していないし、何年住んでも私は異邦人のままであったが、この町が好きだ。
都会にはない光景がここにはある。
忘れたくないな、と思った。残しておきたいな、と思った。
数年前に買ったデジカメを出してきた。
シャッターを切る。液晶の写真を覗く。

スマホの方が画質いいじゃん。

当時一万もしなかったはずのデジカメを下取りに出して、同じくコンパクトデジカメで「いかにも」という形をしておらずそこそこ画質のよさそうで価格が手ごろなものを探し、s120という機種に落ち着いた。

物が増えると本が増える。

カメラという未知の物体を購入し遊んでいるうちに、未知の本棚へと導かれた。
写真やカメラの本は、書店でも図書館でも一大勢力であった。
写真に特化した文庫シリーズも発見した。枻文庫
厚手の上質な紙に、写真をたっぷりと乗せた文庫シリーズである。
フォトエッセイ、というのだろうか。趣向を効かせたラインナップである。
カメラ初心者にも分かりやすそうな一冊を手に取った。
『大人の写真。子供の写真。』新倉万造・中田燦著。
大人と子供が同じものをとったら、どのように違う写真が出来上がるのだろうか。
そのような興味で書かれたフォトエッセイ。
カメラのことや技術的なことはほとんど書かれていない。
唯一分かるのは、主として使ったレンズの焦点距離のみ。50mm。

このフォトエッセイしかしなかなか面白い。

撮影は、市場や川原や動物園や南京町奄美大島で行われる。
例えば動物園。
彼らは象を撮る。
大人は象の皮膚のアップ。
子供は象を正面からとらえたもの。
そこにこのようなコメントが付けられる。

大人の象は象らしくない。
子供の象はどこからどっから見ても象。

子供が純粋で大人が不純だ、なんて言うつもりはない。
それでも確かに、大人として普通に生きている限り、見落としてしまう光景があるのかもしれないと思う。
また最後のページに著者から読者へこんなお願いがある。

最後にお願い。
カメラを首にかけてもらった子供は、嬉しくてきっと駆け出します。
そして、かなりの高確率で、転んでカメラを壊します。
どうか叱らないで。

カメラには様々な役割がある。
だが、多くの人にとって、カメラは思い出を残すための機械である。
大切にしまって、大切に使うだけが、思い出の残し方ではない。
外に出て、シャッターを切ることが、カメラを使った思い出作りの第一歩だろう。
せっかく買ったカメラ。少々手荒な扱いとなっても、どんどん外に持ち出してみようと思う。

読書録
『大人の写真。子供の写真。』
著者:新倉万造・中田燦
出版社:枻出版社(枻文庫)
出版年:2006年

大人の写真。子供の写真。 (エイ文庫)