読書録 地方生活の日々と読書

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無料映画 『Saving 10,000 自殺者1万人を救う戦い』レネ・ダイグナン監督

もちろん私は日本が好きである。
その一方で、日本社会が決して生きやすい社会ではないことも知っている。
日本社会での生きにくさは、自殺者が10年間で30万人という数字に表れている。
30万人とはアイスランドの人口程であるという。

自殺についての映画を見た

自殺との戦いにおいて、「敵」はいったい誰なのか。映画『Saving 10,000 – 自殺者1万人を救う戦い』は、日本の高い自殺率の真の原因究明に挑む一人のアイルラン­ド人の物語である。   (HP作品紹介より)

自殺者1万人を救う戦い……というタイトルではあるが、この映画では日本の自殺の背景についてのインタビューが淡々と流される。決して感情的な映画ではない。日本社会の悪い所が浮き彫りにされていく。
自分の国の悪い所なんて、外国人に言われなくとも分かっている。
そう思うかもしれない。
でも私には英語で聞かされる日本の現状には、改めて驚かされた。
例えば、外国の作家は自殺をしないらしい。
青木ケ原樹海で遺体を探しまわり、映像を撮りYouTubeにアップするような人間がいるらしい。
日本の救急病棟に運び込まれる患者の10-20%は自殺未遂者らしい。
鉄道の衝突事故では4割の人が亡くならずに重症らしい。
知っていましたか?
上記の情報は世界に向けて発信された。知らない、でも興味がある、という人は是非本映画を見てほしい。
ネット上で無料で公開されている。
時間も50分程、食後のドラマ代わりにでもどうぞ。グロい表現はありません。
何故なら、制作者らは、日本で自殺者の氏名や自殺方法まで報道されている様に異議を唱えている。
日本人は雰囲気に影響されやすい。
自殺報道の後、100人単位で新たな自殺者が出るそうだ。

この映画は、8歳の子供のいじめ自殺から孤独な高齢者の自殺まで広く扱っている。
メディアの在り方や自殺に保険金が下りることやアパートでの自殺者の家族にお払い料金を請求されることなど、普通に生きていたら気付かないような日本特有の社会の在り方に気づかされた。
自殺って、死にたくてしている人は少ないのだろう。
現状を変えたくて、その手段として自殺を選ぶのだろう。
現状を打破するための方法の一つとして、私たちには「自殺」という選択肢が脈々と受け継がれている。
この選択肢をなくすためにはどうしたらよいのだろう。
自殺は決して良いものでも、美しいものでもない。
三島由紀夫は彼の文学の中で自殺を美しいものとして書いたが、彼の自殺は決して美しいものではなかった」っというインタビューがあった。「自殺が美しく思えるのはそれが非現実的だからだ」という意見が心に残っている。

映画は、入水自殺の名所、東尋坊で餅屋を開き、自殺防止のための見回りをしている男性へのインタビューで終わる。
話を聞くことで救える命がある。
自殺を社会のせい、政府のせいにするのではなく(もちろん社会の変革も重要だ)、一人ひとりの個人の問題として捉えることが大切なのだろう。
身近な所に、話を聞こうともせず、いつの間にか見殺しにしてしまった命があるかもしれない。

アイルランド人から見た日本社会の悪い所、日本のメディアが報じない日本。
確かに日本では自殺はタブー視されている。でも、死にたいという言葉は毎日のように聞く。この矛盾。
何か嫌なことがある度に、あーもう死にたい、と思う私のメンタリティはものすごく日本的なのかもしれない。


自殺者1万人を救う戦い - SAVING 10,000 - Winning a War on ...