読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

同時読み! 森博嗣『幻惑の死と使途』『夏のレプリカ』を読み返す。

中学生の頃、森博嗣にはまっていた黒歴史を持つ。毎週末図書館へ通いノベルスを借りた。
S&MシリーズVシリーズ四季四部作を読み、熱病が覚めた。
高校受験の勉強等が始まり、森博嗣と私との蜜月は終わった。その後は、シリーズものでない小説やエッセイを読んだぐらいである。Gシリーズ、映画にもなった『スカイ・クロラ』等も読まず、私は大学生になった。

ところで。昔からやってみたい読書があった。
S&Mシリーズの第6作目『幻惑の死と使途第7作目『夏のレプリカは同時期に起きた事件となっている。『幻惑の死と使途』は奇数章、『夏のレプリカ』は偶数章のみで構成されており、『幻惑の死と使途』の第1章の次は、『夏のレプリカ』の第2章へと作中時間は流れているのだ。
それぞれ扱っている事件は別であり、単発で読んで全く問題ない。
S&Mシリーズはノベルス、文庫版それぞれで読んでいるので、最低2回は読んでいるはずだが、その当時は一作ずつ別々に読んでいた。しかし、いつか章ごとに本を変えて、二冊いっぺんに読了したいという思いがあった。

ある日。ひたすら本を読みたい、と思った。
寝食を忘れて本を読みたい。子どもの頃のように。
寝食を忘れて本を読むには、やっぱり、長編ミステリだろう。
学校帰りに古本屋で一冊100円だった『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』を購入。
世間はお盆だ。些細な野望を実行に移すにはうってつけの夜だ。
偶然だが、これら二編の物語でもお盆ごろに事件は起きる。

没頭。一日弱で読めた。

二冊を読了。寝食を忘れて読みたかったのだが、悲しいかな、年齢による集中力の低下には勝てず、本を読みつつ寝てしまった。お腹もすいたので食事もとった。
それでも、24時間もかからず、二冊とも読了。一章ごとに本を替えるのも、思っていたほど面倒ではなかった。
総括すれば、寝食は忘れられなかったけれども、中学生の頃のように没頭したといえる。
やはりS&Mシリーズは面白い。二作に共通するキーワードは「名前」と「成長」かな?
単に面白いと思っただけではなく、ちょっとした発見もあった。せっかくなのでそれを書いておこう。

発見① 意外と忘れている。

今回の読書は過去に確実に読んだことのある本の再読だった。ミステリを読みなおして面白いのか。それが面白い。
何故なら、意外と忘れているからだ。実は物語の筋も事件も、まったくもって忘れていた。はじめて読む本のように楽しく読めた。単に私の記憶力が残念なだけかもしれないが。でも楽しめたから良しとする。

言いわけを少し。今回読んだ二作は実をいうと、中学生のときに読んだときは、そこまで好きではなかった。S&Mシリーズでは封印再度』『今はもうない』『数奇にして模型あたりが好きで、それらの本は三度四度と読んでいた。それに比べ、今回読んだ『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』はシリーズを通読した際に読んだだけであった。覚えていない原因はこの当たりにあるのかもしれない。

発見② 大学生になってから大学生の物語を読む

作中時間において主人公西之園萌絵は大学四年生である。院試を受けていたりする。
理系の研究室に入ってから、これらの本を読むと、中学生のときには引っかからなかったところに引っかかったりする。院生室の描写なんて目に浮かぶようだ。男子院生が大学の屋上でラジコンカーで遊んでいた、なんてところも現実でありそうで怖い。
あとは名古屋の地名が意外と出てきていたことに気づいたり、30代で助教はすごいとか、13歳差はありえないとか思ったり。以前は気にならなかったことに気づくということは、自分も成長しているのかもしれない。

でも残念ながら、私の周りには犀川先生のような素敵な先生はいないし、自分も萌絵みたいに頭のよい大学生にはなれなかった。
私は人生において中学生の頃に一番勉強した。
頑張って勉強すれば、いつか大人になったとき、森ミステリの登場人物のような知的な人間になれるかもしれないという馬鹿な考えがどこかにあったからかもしれないな、と今になって思う。知的な人間? 私には無理でした。

発見③ エピグラフの文章。

一番驚いた点。それがエピグラフの文章。中学生のころには全く気にしていなかったけど、それぞれ夢野久作埴輪雄高である。
何故、驚いたか。夢野久作も埴輪雄高も、中学生のころは全く知らなかった名前であった。
しかし高校に入りドグラ・マグラを読み、夢野久作は大好きな作家の一人となった。本屋で見つけては買っている。全集欲しいなー。
そして埴輪雄高は、つい最近『死霊』を読んだばかりである。しかも長い『死霊』のなかでも、私の好きな部分が引用されてました。死者と会話できる機械の部分だー。
ただの偶然。そう、ただの偶然である。しかしこの偶然に、運命のようなものを感じ、戦慄した。
夢野久作や埴輪雄高を読むことも、森博嗣にはまった中学生の日々から、すでに決定していたのではないか。
そんな非科学的なことを思った。非科学的だが、このような毒にも薬にもならない運命を夢想するのは楽しい。

いや、いずれにせよ、読書の魅力から逃れられていないことは事実。
それどころか、S&Mシリーズ、もう一度すべて読み返したくなってきた。
以前は思わなかったが、三浦さんが林さんや祖父江さんの部下だったかもしれない、とか想像すると非常に面白い。

幻惑の死と使途 (講談社文庫)夏のレプリカ (講談社文庫)