読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

『貧乏は幸せのはじまり』岡崎武志

貧乏性である。
実際貧乏じゃないか、そして貧乏から抜け出せるあてもないじゃないか、と言われたらその通りでもあるのだが、経済状況如何に関わらず貧乏性であろうと思われる。
何故なら、物心ついたときから貧乏性であったから。
具体的な理由は分からない。けれども本当に、それこそ小学校に上がる前から貧乏性的な気質であった。
母親やその血を継いだ弟は、浪費家気質であった。彼らがお金を使うたびに、幼心に我が家計のことを心配していたものだった。お小遣いだって、思い切って使えなかった。何かあったら困るから、とりあえず取っておこうと思っていた。100円、200円とっておいたって、どうしようもないのに。遠足のおやつの上限である500円だって、上手く遣い切れなかった。
要は、無駄に心配症な、人生を楽しめない損な性格である。
貧乏性は改善したい、というか、もう少し人生を楽しめる性格になりたいのだけれど、頭の中の「金」「仕事」「人生」という単語のトライアングルは強固でなかなか崩せそうもない。「人生は金じゃない」と自分に言い聞かせているのだけれど、言い聞かせるということは、それだけ「金」に対して意識が向いているのだろう。金への執着には変わりない。ああ、嫌だ。金の心配をして、一生が過ぎていくのか……

今だって、普通のレシピ本を見るより、「節約レシピ」を謳ったムックを読むほうが好きだ。100円200円でできる、とか、一週間3000円献立、とか。
節約本、貧乏本の類も目につくとつい読んでしまう。
ということで読んだ『貧乏は幸せの始まり』岡崎武志著。
貧乏で貧乏性の私は、幸せになれるだろうか。

貧乏エピソードを読む

目次は以下。

第1章 腐裕より貧格の人びと―楽しく強く清らかに
第2章 愉快痛快!有名人のマル貧話
第3章 男もすなる貧乏を女もしてみんとて
第4章 マル貧生活を生き抜く庶民の知恵―食と住拠
第5章 これだけ押さえればOK!今古東西借金術
第6章 貧乏のススメ―マル貧対談

貧乏性とは対極にある、貧乏だけど楽しく、充実した人生を送った偉人達の物語である。
明治時代に生きた詩人から平成の今バリバリ仕事をしている漫画家まで、古今日本のたくさんの人の貧乏エピソードが詰まっている。外国人だとドストエフスキーの名前もあがっている。世界の文豪は、借金のお願いの手紙にもレトリックを駆使していた。
読みながら思ったのだが、気の持ちようって大事だ。ほんと物事の捉え方って大事。貧乏性ではきっと、いくらお金があっても「お金がなくなったらどうしよう」という不安からは逃れられないのだろう。

読みながら、いくつかの文章に読み覚えがあることに気付いた。
あれ、と思い調べてみた。本書は単行本『あなたより貧乏な人』(メディアファクトリー)の文庫版であった。既読だ。
けれども、忘れていた部分も多く、面白いと思いながら一気読み。
文庫版オリジナルとして、ライターの荻原魚雷氏(本の雑誌で本棚公開をやっていた人だ)、古書ますく堂店主・増田啓子さんとの対談が収録されている。結構ボリュームのある対談で読みごたえがある。

物に囲まれた生活。

読み終わって、何故か、物に囲まれている今の部屋が嫌になった。
断舎離しよう、物を捨てよう。目指せ、シンプルライフ!
とりあえず、床に置いていた本をスチールラックに移した。
賞味期限の切れた調味料を一掃した。服も捨てたい。着ない服がいっぱいある。

物を捨てると、見えなかった部屋の隅が顔を出した。埃が気になった。掃除機をかける。吸引力が弱い。気持ちよくない。
……新しい掃除機が欲しくなった。今度はコード付きのにしよう。サイクロン式がいいなあ。

貧乏?断舎離?
結局、私は「金」と消費物、そしてそれらによる呪縛からは逃れられないのだろうなあ。
いやいやもっと精進せねば。

貧乏は幸せのはじまり (ちくま文庫)


文庫版の表紙の写真、著者が実際に学生のころに住んでいた鶏小屋を改装した下宿だそうだ。
自分、住めるかな……

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