読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

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2014年に読んだ本で印象的だった本5冊+α

 年末。楽しみのひとつは読書ノートを見直すこと。アナログなノートに、読み終わったあたりの日付と題名だけを記すというシンプルな読書ノートをつけて3年になる。ノートは廃番となったミドリのMDノートライトA5横枠。今年でノートも半分まできた。

 今年1年で読んだ本は280冊。今年は就活等で移動することが多かったため(移動時間=読書時間)、昨年に比べると少し多いが、こんなもんだろう。
 私の中を通り過ぎていった本たちのなかには、印象的だったものもそうでなかったものもある。印象的だったものを何冊か取りあげてみたい。私が2014年に読んだ本であり、2014年に発売された本ではないのでご注意を。

すごいエッセイだったで賞


 エッセイは小説や重めのノンフィクションの口直しに読むことが多い。けれども今年は、ズドンとくる重みを持ったエッセイを見つけた。米原万里の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実。軽い題名、軽い文体、そして抜群の面白さにも関わらず、つい色々と考えてしまうエッセイ。著者が過ごしたソビエト学校時代の同級生を訪ねる旅を書いたもの。かつて机を並べた人種も国籍も違う友人たちも、大人になりそれぞれの世界を築き、生き抜いていた。
 読んで自分の世界の狭さを思い知らされた。自分の中の「国家」や「世界」の定義が揺らいだ。世間に溢れる「国際化」「グローバリズム」という言葉の軽薄さよ。

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

世界は広かったで賞


 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』から国や世界繋がりで一冊。『謎の独立国家ソマリランド。探検家・高野秀行によるノンフィクション。題名の通り、ソマリランドなる国の正体を暴くべく、著者らがソマリランドソマリアプントランドなどソマリの国々へと乗り込んでいく。家族の仕送りで成り立つソマリランド、海賊で成り立つプントランド(海賊は完全にビジネス化)、紛争とその援助によって成り立つソマリア。国の概念が変わりました。世界は広い。
 次点で堀田善衞『インドで考えたこと』。岩波青版のインドエッセイ。60年代に書かれた本で、当時の日本人の日本や外国の見方が分かり興味深い。なんというか、今とは全く違ったフレームで世界は切りとられていたのだなあと思う。日本はアジアの辺境に過ぎないのだと改めて思った。アジアの共通語、アラビア語を勉強してみたくなった。

謎の独立国家ソマリランドインドで考えたこと (岩波新書)

頑張って読んだで賞。


 今年読んだ本の中で、一番頑張って読んだ本。ずばり『死霊』埴輪雄高の代表作。ドストエフスキーの『悪霊』を読んだついでに手を出したのだけど、ドストさんの方が頑張って読んでる感は少なかった(馴れの問題?)。ほんと『死霊』は、頑張って読んだ。つまらなかったわけでも、読むのに時間がかかったわけでも(1巻は一昼夜で読んだ)ないんだけど。なんというか、読むぞと気合いを入れないと手に取れなかった。もちろん、嫌々読んだわけではない。
 この本に限らず、古典の本って(『死霊』は古典でもないけど)、古典読むぞ、というテンションに持っていって、気合いを入れないと読めない。もっと自然に、息をするように読めるようになれば、もっともっと楽しめる読書が広がるのかもしれない。ペーパーバックも気合い入れないと読めないなあ(気合い入れたところで読めないことも多いけど……)。
 でも、年に何冊は、こういう気合い入れないと読めない本も読んでいきたいなあと思う。挫折した本もいっぱいあるんだけれど。
 ちなみに『死霊』は気合い入れて読んだところ、未完で終わってました。分からなかった部分も多々あるので、いつか気合い入れて解説書の類も読んでみたいです。

死霊(1) (講談社文芸文庫)悪霊(上) (新潮文庫)

2014年出版だったで賞。


 今年発売の新刊は何を読んだのかなーと思い、ノートを見返すが、新刊っぽい本はほとんど読んでいなかった。が、そのなかでも面白かったものは、これ。マイケル・モス『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』。発売日は2014年6月4日。
 題名だけ見るとトンデモ本の臭いがしないでもないが、読んでみれば面白かった。ニューヨークタイムズの記者が書く、巨大食品メーカーの裏側。私たちはどうして加工食品を好むのか。それは加工食品が緻密な計算の上、巧妙に造られたものであるからだ。悲しいかな、動物である私たち人間は、一動物として油や糖分や塩分が大好きなのである。
 ドキュメントとして非常に面白かった。本に影響を受けやすいたちなので、読んで二週間ぐらいは加工食品を食べないようにしよう、塩分の取り過ぎに気をつけよう(濃い味付けが好き)と思って暮した。加工食品なしの生活はできないなとすぐに諦めたけれど。
 それから今年発売された新書だと鈴木大介『最貧困女子』が面白かった。知らない世界は日本にもある。でも、同じ国に住む人間として知らなかったで済ませてはいけないのだろう。再読してちゃんと感想を書いておきたい。

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠最貧困女子 (幻冬舎新書)

小説の概念が変わったで賞。


 最後にこれは凄い、と思った小説を。アゴタ・クリストフ悪童日記』『二人の証拠』『第三の嘘』の三部作。悪童日記』の映画化を機に読んでみたのだけど、すごかった。一巻だけ読んだときの感想はコチラに書いた。が、三部作全てを読むと、一巻だけ読んだ時とは全く違った風景が見えてきた。一巻だけ読むと、「すごく面白い小説」なのだけど、三巻通して読むと「こんな小説ありなのか!」になる。二巻目、三巻目はただの続編ではなかった。二巻目は一巻目を裏切り、三巻目は一巻目と二巻目を裏切る……。どこまでが物語世界内の本当で、どこまでが登場人物の妄想か分からなくなってくる。だけど、それゆえ、抜群に面白い。すごい読書体験を約束してくれる三部作。読書好き、小説好きな人にこそ読んでもらいたい本。
 我が田舎町では、来年ようやく上映されるようだ。映画も見たいなあ。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

 以上、2014年に読んだ本の中で印象的だった本でした。来年も面白い本に出会いたい。