読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

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本を読む姿勢について。

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」

 先週↓の続き。人生に影響を与えた数冊、大学生編。

dokusyotyu.hatenablog.com
 

 大学時代に身に着けてしまった悪癖の一つに、本を読むときは寝転びながら、というものがある。

 狭い部屋に住んでいたので、本を読めるスペースがベッドの上くらいしかなかったということや、長年の寝る前は本を読むという習慣が完全に板についてしまったこともあり、寝転びながら本を読む姿勢が体にしみついてしまった。

 社会人となりベッド生活から和室に布団を敷く生活へとなり、気が向いたときに布団に倒れこむということがしにくくなった。
 本を読むたびに押入れから布団を出し敷くというのは面倒くさい。

 だからしょうがなく座って本を読むのだけれど、今日は本を読むぞという休日は、布団を敷きっぱなしにして、いつでも本を読めるようにしている。

布団読書

 大学時代、布団の上でたくさんの本を読んだ。

 はじめての一人暮らし。幼い頃から昼寝の習慣がなかった私は、昼間からベッドに横になることの魔力にすっかりと嵌ってしまった。
 晴れた日の日曜日の真昼間から、引きこもってベッドに横になりながら本を読むことの背徳感! 青春の浪費?なんとでも言えばいい。

 大学に入ってすぐのころ、まずは新書をたくさん読んだ。大学の図書館には、各出版社から出ていた新書が整然と並んでいるコーナーがあり、毎日のように通ったものだった。人間の心理に関する新書はほとんど読んだ。
 それから小説。文学、といわれる方面の小説にも手を出した。戦後から高度経済成長くらいの日本を舞台にした小説を好んで読んだ。生きることに対する切実さというものを求めていたように思う。
 要するに、モラトリアムだったのだ。
 長い、長いモラトリアムだった。今も、完全には脱しきれていない。


 3年生のとき、海外文学に出会った。出会ったという言い方は正しくないかもしれない。それまでにカミュカフカなど有名な作品については何点か読んでいた。しかし、確かに海外文学を海外文学と認識し、はまったのは大学3年生のときだ。(とか書いてみたものの、海外文学の定義がよく分からない・・・・・・自分の中では翻訳された小説のうちミステリーやサスペンスじゃないもの=海外文学となっている・・・・・・いいのだろうか)
 さて。そのきっかけとなった一冊はジョン・アーヴィングガープの世界だった。
 面白かった。面白かったものの、人生の悲惨さを含む物語に二度と読みたくないと思った。事実、私はまだ一回しか読んでいない。映画化もされているようだが、DVDを借りてみたいとも思わない。それだけ衝撃的だった。

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

 しかし『ガープの世界』は確実に私の読書世界を広げた。
 翻訳調が苦手、という友人も何人かいるが、一度はまると抜け出せなくなる響きを持つのが翻訳小説だ。
 ベッドの上だけではなく、いろんな場所でそれら翻訳小説に読みふけった。

カラマーゾフの兄弟は、年末年始の帰省時に満員の新幹線の中で読んだ。
『白鯨』は長期間の実習中に少しずつ読み進めた。
『人間の土地』は就活中、羽田空港の待合室で読んだんだったっけ・・・・・・

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)白鯨 上 (岩波文庫)人間の土地 (新潮文庫)

風呂読書

 それから学生時代に、風呂で本を読むことも覚えた。
 さすがに風呂で長編小説を読むのは具合が悪い。適度な長さの短編や(自分的には西村賢太の短編の章分けの長さが風呂読書にちょうど良い)、詩を好んで読むようになった。特に詩は、好きな詩を繰り返し読むのにも、初めて手にとった詩集をぱらぱらとめくるにも、湯船の中はぴったりだ。小中高と、国語の教科書の中で、詩のページが嫌いだった。授業もいまいち面白くなかったし、「良い詩」というのが押し付けがましいように思った。
 でも、詩の世界は、幼い私の想像を遥かに超えて自由だった。もちろん今でも理解できない詩や魅力が分からない詩は多い。それでも自分の中に好きな詩というものができた。初読時は好きになれそうになくとも、何度も読むうちに好きになる詩、一節というものがあることを知った。教科書や国語便覧に載っていた詩だって、読み返せばなかなか素敵だ。
 一番よく風呂の中で読んだ詩集は、アンソロジー『通勤電車でよむ詩集』。何度かこのブログに書いたが、ほんとに買ってよかった。

通勤電車でよむ詩集 (生活人新書)


 とは言うものの実は、就職してからはガス代が気になって、湯船にお湯を張るということをしていない。せめてその程度の光熱費を気にせずに暮らせるだけの余裕のある大人になりたいものだ。
 
 秋の夜中に湯船につかりながらゆっくり読書。
 髪を乾かしながらも読書。
 そのまま布団に入っても読み続けて、いつの間にか睡魔に負けて、朝になって、ああ寝てしまったのかと思いながら昨夜の続きのページを探す。

 そんな休日を私は愛す。


 ・・・ちなみに今日の一冊はジョン・ディクスン・カーの『皇帝のかぎ煙草入れ』でした。 
 
皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)