読書録 地方生活の日々と読書

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ヘプタポッドとネアンデルダール人

仕事中、ふとした瞬間に、何の脈絡もない言葉が頭に浮かんでくることはないだろうか。私にはよくある。最近、やたらと「ヘプタポッド」という言葉が思い浮かぶ。

ヘプタポッドといえば、テッド・チャン作のSF短編『あなたの人生の物語』において、人類とコンタクトをとる7本足の宇宙人である。そしてヘプタポッドという言葉が思い浮かぶと、その物語と共に、ヘプタポッドたちの独特な文字・言語や彼らの人間とは異なった世界の認識方法が連想される。ヘプタポッドたちは時制を超越した言語を操り、決定論的な世界観のなかで生きているのだ。

世界を認識する

人間は人間の方法でしか世界を認識できない。しかし認識方法が異なれば世界は全く違う様相を示すという可能性がある。
それは当たり前のことで、宇宙人に登場願わなくとも、私たち人間と他の生物では見えている世界は大きく異なる。
私は魚が好きなので、水槽を泳ぎ回る彼らを見ながら時々思う。側線という人間の持たない感覚器官を持って、水中世界を泳ぎ回る彼らには、世界をどのように認識しているのだろうか、と。想像力が貧困なので、魚の感覚は想像しきれない。他にも、複眼を持つ昆虫たちが、どのように世界を認識しているのかも気になる。時々、博物館にありますよね、「複眼を体験してみよう」という装置。沢山のレンズに、同じ風景が写っているやつ。

認識の違う生物とのコンタクト、というテーマで、今一番気になっているのは、我々の先祖と他のヒト族とのコンタクトである。

最近『カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史』(カール・ジンマー、ダグラス・J・エムレン)というブルーバックスを読んだ。この本は第4章が「人類の進化」という章であり、類人猿からヒトへの進化の歴史をテーマにしている。興味深いのは「4.5 古代遺伝子からの知見」という部分である。ここでは、ヒトの異種交配について述べている。この本によれば、ヨーロッパ人とアジア人の遺伝子の2.5%はネアンデルタール人由来のものであるという研究や、デニソワ人の遺伝子を持っている人がいるという研究があるそうだ。

ヒトの異種交配。興味深く、面白いと思いませんか?
次々と疑問が浮かぶ。

ホモ・サピエンス以外のヒトは、どのように世界を認識していたのか。
ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人をどのように認識していたのか。
異種間で意思疎通はできたのか。
異種交配はどのような過程で起こったのか。頻度はどのくらいあったのだろうか。
異種交配の結果の遺伝子が現在のホモ・サピエンスに受け継がれているということは、異種交配で生まれた子供が古代ホモ・サピエンス社会で受容されたということだろうか。異種間の子供を社会はどのように認識していたのだろう。

考えると考えるだけ気になってくる。

ということで、次の本として『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(川端裕人)を読んでみたいと思う。
進化人類学の論文も探してみようかな。あと、『あなたの人生の物語』を原作とした映画『メッセージ』も観たいなあ。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

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