読書録 本読みの貪欲

地方在住三十路女の読書日記。趣味が読書と言えるようになりたい。本のほかには犬と魚が好き。

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『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ【読書感想】

ウンベルト・エーコ著『プラハの墓地』を読みました。 ウンベルト・エーコといえば『薔薇の名前』で有名なイタリア人作家。著者紹介では「記号論学者」という紹介がされることが多いが、私は彼の学術的な功績を知らない。ボローニャ大学の名誉教授であったそ…

『死刑にいたる病』櫛木理宇著【読書感想】

SFでも買うかと寄った本屋で見つけた一冊。早川書房の文庫棚で、SF小説たちに挟まれて売られていた。早川文庫の例に漏れず、普通の文庫本よりもほんの少しだけ、背が高い。 櫛木理宇さんの小説を読むのはこの『死刑にいたる病』が初めてである。表紙の裏の著…

2020年に観る『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督)。【映画感想】

Amazonプライムビデオで映画『シン・ゴジラ』を見ました。家にDVDもあるので、今回で3回目か4回目かの視聴でした。初めて見たときは、「普通に面白いな」くらいの感想だったのだけれども、二回三回と回数を重ねるたびに面白くなっていく気がする。私はこの映…

『2001年宇宙の旅(決定版)』アーサー・C・クラーク著 伊藤典夫訳

有名SFを読んでおこう、と昨年末に早川書房の電子書籍セールで買ったアーサー・C・クラーク著『2001年宇宙の旅』を読了した。世間的には同題名のキューブリック監督による映画の方が有名なのだろう。「2001年宇宙の旅」で検索すると、映画のことばかりが…

『インターネット文化人類学』(セブ山著)【読書感想】

『インターネット文化人類学』という本を読んだ。はてなブックマークにも時々名前のあがる、「オモコロ」などのネットメディアで活躍するライター、セブ山さんによる、インターネットに生息する人々の生態を解説する一冊である。 この本の裏表紙の著者紹介に…

『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』J.D.ヴァンス

アメリカという国は近くて遠い国だ。太平洋を挟んで隣国であり、我が国の社会経済に多大な影響力を持っている。テレビをつければ毎日のように大統領の名前が登場するし、ホワイトハウスやニューヨーク証券取引所の映像もよく目にする。それだけ身近な国であ…

『ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤』(コーマック・マッカーシー著)【読書感想】

4月。年度が代わり、陽気は春めいてきた。しかし世界では引き続き新型コロナウイルスが猛威を奮い続けている。日本でも感染者は三桁の日が続いているが、一方で非常事態宣言はまだ出ていない。私は今のところ普段通りの生活を続けている。平日は仕事へ行き、…

『マーダーボット・ダイアリー』(マーサ・ウェルズ著)【読書感想】

3連休。読むのを楽しみに積んであったSF小説『マーダーボット・ダイアリー』(マーサ・ウェルズ著 中原尚哉訳)をついに読んだ。一人称が「弊機」の殺人ロボットが主人公の小説だと聞いて興味を持ち、2ヶ月ほど前に買ったものだ。いざという時に読もうと、積…

ディストピア×サスペンス『ドローンランド』(トム・ヒレンブラント著)【読書感想】

ドイツ人作家によるSF小説を読んだ。SFといってもただのSFではない。ディストピア小説だ。『ドローンランド』(トム・ヒレンブラント著 赤坂桃子訳)である。 正直なところ、この『ドローンランド』という題名には惹かれなかった。原題も『DROHNEN LAND』であ…

『世界史を変えた13の病』(ジェニファー・ライト著、鈴木涼子訳)

新型コロナウイルスの流行に伴い、感染症をテーマにした本が売れているという。カミュの『ペスト』が重版というニュースが流れているし、岩波新書編集部さんは、村上陽一郎『ペスト大流行』、山本太郎『感染症と文明』の緊急復刊、押谷仁・瀬名秀明『パンデ…

ハードSFの洗礼を浴びる 『順列都市』グレッグ・イーガン【読書感想】

「SF おすすめ」などと検索すると、「ハードSF」なる言葉と共に紹介されている作家、グレッグ・イーガン。 ハードSF、少なくとも初心者向けでは無さそうな響きである。しかしグレッグ・イーガンの名前の横には「ハードSF」という言葉だけではなく、「傑作」…

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅著)【読書感想】

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅著)を読んだ。 岩波新書から出版されており、第二次世界対戦におけるドイツとソ連の戦争についてコンパクトにまとめられた一冊である。 以下、目次。 はじめに 現代の野蛮 第一章 偽りの握手から激突へ 第一節 スターリン…

人間の速度で進む戦争映画。『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス監督)【映画感想】

『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス監督)を観てきた。すごい体験だった。出来れば映画館で見てきてほしい。今までにない映像体験が待っている。 映画が始まってすぐに圧倒された。始まる前の予告編を眺めているときは寒いくらいだったのに、顔が火照…

『火星年代記』レイ・ブラッドベリ【読書感想】

有名なSFを読んでおこう読書の一環で、レイ・ブラッドベリ『火星年代記』を読んだ。年末年始のハヤカワSFフェアで大人買いした本の中の一冊。一泊二日の出張の間に読破した。レイ・ブラッドベリさんの本を読むのは「未来の焚書」を扱った『華氏451度』に続い…

レシピ3つのレシピ本。『いちばんおいしい家カレーをつくる』水野仁輔著

またまたすごい本に出会ってしまった。 『いちばんおいしい家カレーをつくる』というカレー本である。著者は「東京カリ~番長」で有名な水野仁輔さん。ネットメディアでも時々見かける名前である。著者は、カレーの本をたくさん出しておられ、私も何冊か読ん…

『闇市』マイク・モラスキー編【読書感想】

戦中戦後の日常であった「闇市」をテーマにしたアンソロジーを新潮文庫で見つけた。編者のマイク・モラスキーさんは、本の紹介によると早稲田大学国際教養学部教授で、日本の戦後文学やジャズ音楽がご専門という。このアンソロジーの特徴は選書にある。冒頭…

『CATS』トム・フーパー監督【映画感想】

映画『CATS』を観てきた。 高校生のときに『CATS』というミュージカルがあること、都会には『CATS』専用の円形劇場まであることを知ってから、観てみたいものだと思っていた。しかし観劇する機会はなく、いつか観たい観たいと思いながらも10年以上が経ってし…

『パラサイト 半地下の家族』【映画感想】

2020年初の映画館は『パラサイト 半地下の家族』でした。 はじめて題名を聞いた時はホラー映画かと思ったのだが、そうではなかった。韓国の格差社会をユーモラスに描いた怪作だ。ホラーではないが、恐怖と暴力は生々しく描かれており、ある意味、下手なホラ…

ディストピア小説を読む 『われら』ザミャーチン(松下隆志訳)【読書感想】

オーウェル『1984年』に影響を与え、 ハクスリー『すばらしい新世界』が影響を認めない ディストピアSFの先駆け、待望の新訳 ザミャーチン著『われら』の光文社古典新訳文庫の帯である。ザミャーチンという著者も、『われら』という題名も聞き覚えのないもの…

詩的な戦争映画。『ダンケルク』【映画感想】

2017年の公開時に見過ごしてから、見たい見たいと思っていた映画をようやく鑑賞した。クリストファー・ノーランが監督・脚本・製作を手がけた『ダンケルク』である。第二次世界大戦中の英仏軍のダンケルク撤退戦を題材にした戦争映画だ。戦争映画はあまり見…

2019年読書まとめ 読書メーターより

忘備録として、2019年に読んだ本を読書メーターの記録を使って一覧にした。 こうして一覧にすると、小説ばかり読んでいたことがよく分かる。 2019年の読書メーター読んだ本の数:65読んだページ数:23640ナイス数:210悪女について (新潮文庫)の感想数年ぶり…

『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ【読書感想】

年末年始の長期休暇を利用して岩波文庫で7冊に及ぶ長編小説『モンテ・クリスト伯』(アレクサンドル・デュマ著)を読了した。『モンテ・クリスト伯』あるいは『巌窟王』の題名で知られ、ドラマ化もされ、主人公エドモン・ダンテスがスマホゲームFGOに取り…

『はだかの太陽』アイザック・アシモフ【読書感想】

正月休み前に早川書房の電子書籍セールで、SF小説を大人買いした。数年前からSFを読み始めた初心者からすると、「古典SF」といわれるような有名どころの小説が安く買えるのは大変有り難い。10冊ほど買ったので、来年1年かけて少しずつ読んでいこうと思う。 …

2019年の読書振り返り

2019年を振り返る。 今年はどんな年だったか。人生2度めの転職をした年であった。転職は人生において結構な一大事だ。しかし転職してから9ヶ月が経ち、新しい職場にそこそこ馴染んだ今から振り返ると、そんな一大事を乗り越えたという感慨はない。すでに新し…

『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』高橋弘希【読書感想】

パンクでトリッキーな小説を読みたい。そんな欲求に突き動かされて向かった本屋さんで出会った一冊。手のひらに軽く収まってしまうほどの、薄めの文庫本。表紙にはクマのぬいぐるみ?が描かれた黄色い皿に、ケーキが乗っているというよく分からない写真。「…

ロスジェネ小説 『ロス男』平岡陽明【読書感想】

ロストジェネレーション世代の作家が書いた、ロストジェネレーション世代の男を主人公とした小説『ロス男』(平岡陽明著)を読んだ。 生まれ落ちた世代で規定されてしまうほど、人生というものは単純ではない。「ロストジェネレーション世代」と一言で言って…

#小説で振り返る私的2010年代

ツイッターを眺めていたら、面白そうなハッシュタグを見つけた。#小説で振り返る私的2010年代。 2010年から2019年までの各年の私的ベスト小説を挙げていくというタグだ。ベストセラーのリストから時代の空気が感じられるように、かつての自分が夢中になった…

やっぱりミステリは面白い『カササギ殺人事件』(アンソニー・ホロヴィッツ著)【読書感想】

今週のお題「2019年買ってよかったもの」 今村昌弘著『屍人荘の殺人』に引き続き「今更かよ」と言われそうな本を買って読んだ。アンソニー・ホロヴィッツ著『カササギ殺人事件』である。昨年末、国内ミステリ界隈で話題を攫っていたのが『屍人荘の殺人』だが…

共働きに救いはあるか?『夫婦幻想--子あり、子なし、子の成長後』(奥田祥子著)

「妻は変わってしまった」「夫に絶望した」--。取材対象者の多くが口にした言葉からは、目の前の現実から目を背け、「幻想」の中にだけにしか夫婦像を描けない男女の悲哀を感じずにはいられなかった。と同時に、苦悩し、憤りながら、それでもなお、夫婦に…

ミステリ好きこそネタバレ前に読んで欲しい 。『屍人荘の殺人』(今村昌弘著)【読書感想】

さて2019年も末である。この期に及んで私は『屍人荘の殺人』(今村昌弘著)をこのブログを読む方に勧めようとしている。本好きの方なら何を今更と思うだろう。『屍人荘の殺人』世に出たのは2017年の秋のことである。既読の方も多いだろう。 その頃の私は、し…