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『インターネット文化人類学』(セブ山著)【読書感想】

 『インターネット文化人類学という本を読んだ。はてなブックマークにも時々名前のあがる、「オモコロ」などのネットメディアで活躍するライター、セブ山さんによる、インターネットに生息する人々の生態を解説する一冊である。
 この本の裏表紙の著者紹介によるとセブ山さんは「インターネット文化人類学者」らしい。

欲望の赴くままに取材活動を続け、ウェブの裏と活用法を知り尽くしている。

そうだ。

インターネット文化人類学とは、

インターネットを介して遭遇する人や出来事に対して、インタビューや実験・検証をおこない、人々がインターネットで織り成す「文化」を考察する学問。

とのこと。

 この『インターネット文化人類学』が、どのような本か紹介する代わりに目次を引こう。インターネットの発達とともに成長し、毎日のようにインターネットで遊んでいる私やあなたにとって、気になる項目がたくさん並んでいる。

まえがき
第1部 ネットの闇
1部1章 なぜ彼らをパクるのか?パクツイ常習犯が語るTwitterの闇
1部2章 ネットに悪口を書き込むヤツらに反応する事はいかに不毛な行為なのか
1部3章 炎上したらどうなるか?〜経験者が語る炎上のメカニズム〜
1部4章 Line@の登場により世はまさに「大ファン抱き」時代へと突入!
1部5章 ある日、突然「ネタ画像」としてネットで拡散されるということ

第2部 知られざる生態
2部1章 チャットレディ なぜ彼女たちはネットで裸を晒すのか?
2部2章 母親はどこまで息子のTwitterを監視しているのか?
2部3章 アイドルになる夢を潰された高校生は「ゴルスタ」を恨んでいるのか?
2部4章 本当にキラキラネームは低い文化圏から生まれるのか? 「きららちゃん」が語るキラキラネーム差別
2部5章どんなとこでも必ずいいねしてくるやつは一体どういうつもりなのか

第3部 ネット活用術
3部1章 Twitterは「第三者目線」でツイートした方がウケることが判明
3部2章 女が飯をたかりに来るくらいLINEスタンプで儲ける方法
3部3章 Twitter VS フェイスブック 本当にやれるSNSはどっちだ?
3部4章 言葉の壁を越えて「世界」でウケる方法

あとがき
付録 まだ見ぬ君へ
Twitter実現 つぶやきだけで個人を特定できるのか?

 この目次から察せられるように、とても内容の濃い一冊だった。そして移り変わりの激しいインターネット社会の貴重な記録となっている。
 インターネット上に発表された原稿に「編集後記」等を追記したものをまとめ、一冊の本にしているので、まさにインターネット記事を読むようにサクサクと読める。「母親はどこまで息子のTwitterを監視しているのか?」という記事は、ネット上でも読んだ記憶がある。その当時も興味深く読んだ気がするが、今回改めて書籍という形で読んだところ、やはり軽い衝撃を覚えた。今時の高校生って、こんなプライベートなこともネットに晒してしまうんだ、という驚きと、そんな子どものアカウントを表も裏も含めてチェックしている親や教師の存在に、一種の戦慄を覚えた。
 また、毎日はてブを覗いているにも関わらず「ゴルスタ」(ゴールスタート、中高生向けSNS)については、その存在も炎上、解散の流れも知らなかった。この本を読まなければ、知ることはなかっただろう。

 この本は、そんなネットの奥深さ、その奥深さを形作っている私たちユーザーの素顔を教えてくれる一冊となっている。
 そしてこの本の良いところは、魑魅魍魎が跋扈するインターネットの面白さと同時に、そこに潜む怖ろしさをも教えてくれるところである。

 この本には、人々があまりに無邪気に自分の気持ちやら個人情報を世界中の不特定多数に公開している姿が書かれている。ちょっとした油断で炎上したり、悪意なくツイパクしている人が大勢いる。またやろうと思えば、ネット上の情報から現実の住所を特定することも可能であることも示されている。これはとても恐ろしいことだと思う。

 しかし一方で、私もこうして、無防備に駄文を垂れ流している。セブ山さんのいう「自分で創作せずに悪口ばかり言う人」なのかもしれない、などと思ったりもする。しかし、なんだかんだ言っても、まだまだ私はこのブログの更新は止めないだろう。私たちはインターネットとはこの先の人生、長い付き合いになるだろう。だからこそ、たまにはこうして、自分と社会とインターネットを振り返るのも悪くはないなと思った。

インターネット文化人類学

インターネット文化人類学

  • 作者:セブ山
  • 発売日: 2017/02/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)