読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書録 本読みの貪欲

近畿地方の某田舎町で一人暮らし中。

光文社古典新訳文庫の短編集!ビアス『アウルクリーク橋の出来事/豹の目』

読んだ本 海外の物語

10月はあっという間に終わってしまった。もう次の金曜日が31日。ハロウィン。
ハロウィンにかこつけての飲み会があるのだが正直出たくない・・・・・・最近、飲んだ翌日に二日酔いからの偏頭痛に見舞われるようになってしまい、翌日のことを考えると思いっきり飲めなくなってしまった。酔って楽しむのは嫌いじゃないんだけど。

そんなことはどうでもいい。ハロウィンだ。
ハロウィンだから選んだわけではないが、最近読んだ短編集がハロウィンにぴったりな感じだった。
ビアスの『アウルクリーク橋の出来事/豹の目』
これはいわばアメリカの怪談だ。妖怪は出てこないが幽霊はいっぱい出てくる。
ハロウィン=アメリカ作家の怪談、ハロウィンの専門家からすれば怒られてしまいそうな図式だが、ハロウィンについては「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!」と目をくりぬいたカボチャぐらいのイメージしかないので許してください。
ちなみに我が田舎町には七夕(旧暦)に、子供たちが近所を回りお菓子をもらうという行事がある。大学入りこの町にくるまでこんな行事があるなんて知らなかったので初年度はけっこう驚いた。もちろんハロウィンとは関係ない。

アンブローズ・ビアスの短編集を読んでみる。

収録作は以下。

 訳者まえがき
ウルクリーク橋の出来事
良心の物語
夏の一夜
死の診断
板張りの窓
豹の目
シロップの壺
壁の向こう
ジョン・モートンソンの葬儀
幽霊なるもの(首くくりの立会人/冷たい挨拶/無線通信/逮捕)
レサカにて戦死
幼い放浪者
月明かりの道
 解説 小川高義
 年譜
 訳者あとがき 

幽霊が出てくるということは、そこに「死」があるということだ。
この短編集は「死」の臭いに満ちている。すべての短編に死人が出てくるのだ。
背景には、まだ原生林が生い茂る北米の大地と南北戦争がある。ビアスは19世紀後半のアメリカを生きた。まだまだ夜は暗かった時代だ。

ビアスといえば短編集の表題作『アウルクリーク橋の出来事』悪魔の辞典が有名だろう。
私はこの作家のことを筒井康隆の『短編小説講義』で知った。『短編小説講義』で筒井は『アウルクリーク橋の出来事』を取り上げている(ただし筒井が取り上げているのは岩波文庫版『アウル・クリーク橋の一事件』)。
『アウルクリーク橋の出来事』は絞首刑となりアウルクリーク橋で吊るされることになってしまった農園主の話である。
細部の丁寧な描写と情け容赦のないオチが秀逸。
筒井は『悪魔の辞典』も自ら訳している。筒井康隆のブラックジョーク的な短編が好きな方は是非一読を。

個人的に好きだった作品

ビアスはオチを大切にした作家である。短編集を見てみると人間くさいオチもあれば、幽霊チックなオチもある。
ところで私は先に『短編小説講義』を読んでいたがために、『アウルクリーク橋の出来事』をオチを知っていた。ちょっと、いや、かなり残念である。
読んだ中で、オチも含めて一番良かったと思ったのは『良心の物語』である。
これは怪談ではない。幽霊も出てこない。代わりとして出てくるのは良心を持った二人の人間である。
北軍の大尉が南軍のスパイを捕まえたところから物語は始まるのだが、実は二人は以前に一度会ったことがあり、大尉はスパイに借りがあった。
命の恩人といってもいい敵のスパイを捕まえてしまった大尉はどうするのか。
その先はここには書かない。私は好きだ、このオチ。どきどきしながらページをめくる価値がある短編だと思う。

それから本書の魅力として悪魔の辞典』からの抜書きがある。
短編と短編の合間に『悪魔の辞典』から一項目が抜き出されている。たとえばこんな感じ。

長寿Longevity 死の恐怖が異常に長引くこと。

悪魔の辞典』は一度読んだことがあるが、上記のようなアフォリズムをいっぺんに読むのはちょっと大変だった。
本書のように小出しにしてくれたほうがずっと楽しむことができた。
でも本書に載ってるのは、ほんの数例だけなので読み足りない。もっと読んで楽しもうとすればやはり『悪魔の辞典』を当たるしかないのか・・・・・・パラドクス。

読書録

『アウルクリーク橋の出来事/豹の目』
著者:ビアス
訳者:小川高義
出版社:光文社(光文社古典新訳文庫)
出版年:2011年

アウルクリーク橋の出来事/豹の眼 (光文社古典新訳文庫)