読書録 本読みの貪欲

人生2度目の転職をしました。ミステリ、海外文学、文房具に犬と魚が好き。

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日本の物語

『闇市』マイク・モラスキー編【読書感想】

戦中戦後の日常であった「闇市」をテーマにしたアンソロジーを新潮文庫で見つけた。編者のマイク・モラスキーさんは、本の紹介によると早稲田大学国際教養学部教授で、日本の戦後文学やジャズ音楽がご専門という。このアンソロジーの特徴は選書にある。冒頭…

『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』高橋弘希【読書感想】

パンクでトリッキーな小説を読みたい。そんな欲求に突き動かされて向かった本屋さんで出会った一冊。手のひらに軽く収まってしまうほどの、薄めの文庫本。表紙にはクマのぬいぐるみ?が描かれた黄色い皿に、ケーキが乗っているというよく分からない写真。「…

ロスジェネ小説 『ロス男』平岡陽明【読書感想】

ロストジェネレーション世代の作家が書いた、ロストジェネレーション世代の男を主人公とした小説『ロス男』(平岡陽明著)を読んだ。 生まれ落ちた世代で規定されてしまうほど、人生というものは単純ではない。「ロストジェネレーション世代」と一言で言って…

ミステリ好きこそネタバレ前に読んで欲しい 。『屍人荘の殺人』(今村昌弘著)【読書感想】

さて2019年も末である。この期に及んで私は『屍人荘の殺人』(今村昌弘著)をこのブログを読む方に勧めようとしている。本好きの方なら何を今更と思うだろう。『屍人荘の殺人』世に出たのは2017年の秋のことである。既読の方も多いだろう。 その頃の私は、し…

人を思う重さについて 『夜のアポロン』皆川博子著 日下三蔵編【読書感想】

夜になると、太陽は輝くのです。 ぎらぎらと白く燃え、すさまじいエネルギーを放ち、あたしを、あなたを、灼きつくすのです。 見せてあげましょう。あたしと一緒にいらっしゃい。 (表題作『夜のアポロン』より) 初めて読んだ皆川博子さんの小説は『開かせ…

スパイスカレーと読書。『アリバイ レシピ』(北森鴻著)【読書感想】

久しぶりのブログ更新である。 ブログも更新せず、それどころか読書もせずに何をしていたのかといえば、スパイスからカレーを作っていた。何を思ったのか味音痴のくせにスパイスをまとめ買いしてしまい、それらを有効利用すべくスパイスやカレー関係のレシピ…

不幸になってしまえばいいのに。村上春樹著『国境の南、太陽の西』

不幸になってしまえばいいのに、主人公たちに対し、そんな風に思いながら読んでいる自分に気づいて驚いた。 久しぶりに村上春樹さんの小説を読んだ。中長編小説『国境の南、太陽の西』。実はタイトルだけを見て、紀行文かと思い込み衝動買いしたのであった。…

香菜里屋シリーズ2作目。北森鴻『桜宵』を読む。

この3連休は、本を読むか、漫画を読むか、本棚を整理するかしているうちに終わってしまった。 ある本を少し読んでは別の本を手にするという、集中力のない読書であった。そんな中でも読み切ったのが、北森鴻さんの『桜宵』である。香菜里屋シリーズの第2作目…

ディストピア小説を読む 『消滅世界』村田沙耶香著【読書感想】

村田沙耶香著『消滅世界』を読んだ。何が消滅した世界の小説なのか。帯にはこうある。 世界から家族、セックス、結婚…が消える 舞台は人工授精技術が進み、セックスではなく人工授精技術で子供を生むことが普通になった、パラレルワールドな日本(近未来の日…

米澤穂信『満願』【読書感想】

ある日、米澤穂信『満願』を原作とするドラマの宣伝を見た。そういえばこの本を持っていたな、長編ミステリかと思っていたが短編集だったのか、と思った。せっかくなので積読山から単行本を探し出し、開いてみる。6つの短編が収められており、ドラマ化した…

森博嗣『私たちは生きているのか?』読了。【読書感想】

最近、森博嗣のWシリーズを履修している。2018年も半分が終わろうとしているが、今年の読書目標「SFを読む」が、ぜんぜん達成出来ていないので、読みやすいしいずれは読むことになると思われる森博嗣の講談社タイガ文庫を、梅雨の合間の晴れた日曜日に引きこ…

一人称で語るお前、お前は誰だ…? 神林長平『絞首台の黙示録』【読書感想】

ある日の仕事中、本を買おうと思い立った。ストレスがたまっていた。ストレスの溜まると本屋に行きたくなる。 ストレスというのは仕事だけが原因では無いことは、薄々わかっていた。人生に対する不全感。あーなんでこうなるんだろうなぁ自分の人生。何がやり…

小説のための小説『1000の小説とバックベアード』佐藤友哉【読書感想】

小説をテーマにした小説を読んだ。佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』。 著者、佐藤友哉の本を読むのは初めてだったが、これが面白かった。一気読み。昨日は台風が来るとのことで、引きこもって本を読んでいたのだが、おかげで退屈することなく一日を過…

すべては「普通」のために。『コンビニ人間』(村田沙耶香著)【読書感想】

読みたい読みたいと思っていた本をついに購入。単行本の小説を買うのは久しぶりだ。 第155回芥川賞受賞作、村田沙耶香『コンビニ人間』。帯にはこうある。 36歳未婚女性、古倉恵子。 大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。 こ…

私=人間=人形? 森博嗣『赤目姫の潮解』100年シリーズ最終巻!【読書感想】

森博嗣の100年シリーズに最終巻が出ていると知ったのは、恥ずかしながらつい最近のことだった。毎週のように図書館に通い、毎週のように森ミステリを借りていた中学生の頃が懐かしい。 最終巻は、もうとっくに文庫化もされており、本屋にも図書館にも並んで…

恋愛小説じゃないけど。『告白』。町田康【読書感想】

日曜日。 平日は毎日のように、次の休みの日こそ遊びに行こうと思っているのに、いざ休日を迎えると腰が重い。 都会の本屋へ行きたいなと思うのだけど、まあ、図書館から借りた本も、キンドルには読み返したいシリーズ物も、部屋の片隅には積読山もあるし、…

夏に読む京極ミステリ『絡新婦の理』

妖怪。妖怪ウォッチを持ち出すまでもなく、人々は妖怪が大好きなのだろうと思う。夏休みということもあってか、美術館も水族館も妖怪をテーマにした展示をしているようだ。 妖怪をモチーフにした文学作品も星の数ほどある。 私は怖がりなのでホラー小説は読…

信号機の恋物語『シグナルとシグナレス』

好きなバンドの好きな歌詞に「シグナルとシグナレス」という一節があった。 シグナルとシグナレス 始発電車 自殺 唄うたいと商業主義 愛こそすべて (by amazarashi『ラブソング』) シグナルとシグナレス? ある日思い立って、その言葉を検索窓に打ち込んだ。…

阿部公房『他人の顔』【読書感想】

馬鹿な男の馬鹿みたいな話。 今の私が、阿部公房の長編『他人の顔』を一言で紹介するとこのような言葉になった。でも同時に、そう言いきっていいのだろうか、とのもやもやした不安がよぎる。私はこの物語を正確に読み取れているだろうか。確証がない。 これ…

倉橋由美子『シュンポシオン』

本が溜まっていく。 このところ、買ったり借りたりする本>読む本、なので、部屋にどんどんと未読本が溜まっていく。読もう読もうとは思うものの、無理してまで本は読むものでもなく、とすれば、寝る前の30分読書で消化できる量はたかが知れており、その結果…

古川日出男のショートショート 『夏が、空に、泳いで』

本に書かれた情景が、日常のふとした瞬間に立ちあがってくることがある。まるで白昼夢のように。あるいは。ある単語が思い浮かんだと思えば、その単語は脳内を漂い、やがて単語は意味を持った一節となり、そして私はかつて読んだことのある本の題名に思い至…

世捨人にすらなれない。車谷長吉『贋世捨人』【読書感想】

私小説を無性に読みたくなるときがある。人間のダメなところをみたい、という切実な欲求に襲われることがある。そんな欲求に見事応えてくれた一冊。車谷長吉『贋世捨人』は人間のダメなところを見事白日の下に引きずり出す。 人間の偉さには、どんなに偉い人…

『枯木灘』の前日譚 芥川賞受賞作・中上健次『岬』【読書感想】

疲れている。 用事があって横浜まで行ってきた。夕方の飛行機で田舎町に帰って来て、夕食を食べ、今この文章を書いている。そしてとても疲れている。 久しぶりに都会に出たせいか、長時間歩き回ったせいか、昨夜見た嫌な夢のせいか(教授にハードな実験日程を…

不倫小説。井上荒野『誰よりも美しい妻』

そろそろクリスマス。クリスマスっぽい本でも読むかと思い図書館へ行くものの「クリスマス本コーナー」(図書館の企画棚)に並べられた絵本たちに興味は惹かれず、『クリスマス・キャロル』でも読めばいいのかと思うもそんな気にもなれず、いつも通りのセレク…

自薦短編集が出たそうな。大江健三郎『他人の足』

心を失うと書いて「忙」しい。 最近ちょっと忙しかった。忙しければ忙しいほど心の肥やしたる本成分が枯渇する。 珍しいことに本を読む時間すら取れなかった。寝る前の読書タイムすら睡眠時間の確保に回してしまった。 (まあ学生なので参考書や論文は読んで…

中島らもの長編小説一気読み!『ガダラの豚』

久しぶりに小説の一気読みをした気がする。 中島らも『ガダラの豚』を読んだ。これがとにかく面白い。 祝日1日を読書に使ってしまったではないか。せっかくの秋晴れだったのに。 とにかく面白かった。 内容を説明するのは難しい。 主人公の大生部はアフリカ…

今更ながら村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』を読んだ。

天の邪鬼なため話題のベストセラーは読みたくない。 現代日本を代表する作家によって書かれ、あっという間に50万部を売り上げた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』。 つい先日には、英訳版がニューヨーク・タイムズのランキングで1位であったと…

同時読み! 森博嗣『幻惑の死と使途』『夏のレプリカ』を読み返す。

中学生の頃、森博嗣にはまっていた黒歴史を持つ。毎週末図書館へ通いノベルスを借りた。 S&Mシリーズ、Vシリーズ、四季四部作を読み、熱病が覚めた。 高校受験の勉強等が始まり、森博嗣と私との蜜月は終わった。その後は、シリーズものでない小説やエッセ…

埴谷雄高『死霊』(講談社文芸文庫)を読む。【読書感想】

埴谷雄高『死霊』、講談社文芸文庫三冊を読了した。 気合いを入れて読み始めたが、意外とすんなり読めた。普通に面白いと思う。通読に2か月を要したが、これは『死霊』を読みながら別の本に浮気していたためである。しかし通読をしたからといって、内容を理…

立派に生きたいと思った 深沢七郎『楢山節考』

今日は某就職試験の合格発表があった。 発表時間までの焦る気持ちを落ち着かせようと、とりあえず本を読む。 名作を読んでおこうということで買った一冊。 深沢七郎『楢山節考』。第一回中央公論新人賞の当選作である。有名だから読んでおこう、という浅はか…