読書録 本読みの貪欲

人生2度目の転職をしました。ミステリ、海外文学、文房具に犬と魚が好き。

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2019年GW無計画読書日和

待ちに待った春の連休がやってきた。年明けくらいからゴールデンウィークはどこにも行かないことに決めており、その代わりに本を読んで過ごそうと考えていた。何を読もうか、せっかくだから普段は読めない長い小説が読みたいな、などと想像しては楽しみにしていた。

しかし3月に転職してから2ヶ月。生活のリズムが変わったからか、読書量が急激に減ってしまった。本を読まない波が来ており、ブログも更新していない。4月に読んだ小説はたったの3冊。そのうち2冊は再読本。初読のものは『影の子』(デイヴィッド・ヤング著)というポケミスで、冷戦下の東ベルリンを舞台にしたサスペンス。事件は解決するのだが、まったくもって救いようのない結末だった。悲惨な物語も数多く読んできた私でも、読後にシャワーを浴びながら、この本が描き出した社会の、人間の冷たさに言いようのない悲しさを感じた。
再読したのは森博嗣さんのvシリーズの4冊目『夢・出会い・魔性』と伊藤計劃さんの『ハーモニー』。『ハーモニー』は以前読んだ時は、そこまですごい小説とは思わなかったのだけれども、初読時から時が経ち人間観、人生観が変化したのか、とても面白く感じた。図書館で人類の進化に関する図鑑を借りてきているのだけれど、その図鑑に載っている原人たちのイラストを見ながら「この二足歩行する人類の隣人たちには自我はなかったのだろうな、彼らはハーモニーの世界に住んでいるのだな」と思った。ハーモニーの書き出した理想の世界の在り方には考えさせられるところがある。ブログにも書きたい(気持ちはある)。

そんなこんなで読書欲が低いまま、ゴールデンウィークの初日を迎えてしまった。読書欲が高い頃には、完結し話題となっていたSF大作『天冥の標』を読もうか、それとも厚さとマネークリッププレゼントのセールスで話題だった現代アメリカ文学小説『JR』を読もうかと、わくわくしていたのだけれども、結局本屋へ行くこともなく迎えてしまった。
しようがないので積読本に手を伸ばした。トルストイ作『戦争と平和』。3年前くらいから読んでいる。話の区切りが良いところまで一気に読んでは数ヶ月寝かす、という変則的な読み方をしてきて、現在岩波文庫で6冊中の5冊目を読み終えたところ。最後の6冊目の目次にはエピローグという文字。物語の終わりが見えてきた。とりあえず、この一冊から、平成最後で令和最初のゴールデンウィークを楽しんでいきたいと思う。

戦争と平和(全6巻) (岩波文庫)

戦争と平和(全6巻) (岩波文庫)

Vシリーズを読み返す。森博嗣著『黒猫の三角』

林警部の車種は何か

 森博嗣さんの第2長編ミステリシリーズである、Vシリーズを読み返している。しばらく読み返そう、読み返そうとは思っていたのだけれど、本棚に並ぶVシリーズを前にするといつでも読めるという気が起きてしまい、なかなか手が出なかった。一念発起して黒猫の三角を手にとった。ページを捲る。シリーズの主要登場人物の一人である保呂草さんの語りに、すっと飲み込まれた。私がVシリーズにハマっていたのは中学生から高校生のころにかけてである。およそ10年ぶりの再会だ。

 さて、10年ぶりにこのシリーズを手にした理由だが、それは、林警部の乗っていた車について気になったからであった。林警部とはこのシリーズに出てくる警察側(ミステリ的な「探偵に対する警察」である)の頭脳であり、このシリーズの読みどころである男女の三角関係の一角を担う人物である。この林警部の乗っていた車種が何だったか、というのが気になったのであった。
 中学生や高校生のころの私はもちろん免許も持っておらず、車への興味はほとんどなかった。街中で見かける車についても見分けがつかず、車は車、それ以上ではなかった。なので物語の登場人物たちの乗っている車についてもあまり興味が沸かず、読み飛ばしていたのだと思う。林警部の乗っていた車について、私はシトロエンであったように記憶していた。しかしシトロエンの何の車種かということについては覚えておらず、シトロエンというメーカ名からシュッとしたセダンというイメージを持っていた。
 それから私は大人になって、免許をとり、田舎に住んだ必然で自分の車を持つようになった。車に詳しくなったとは言えないが、それでも人並みに車の名前がわかるようになった。そしてシトロエンというメーカには2CVという車種が有ることを知った。レトロで可愛らしい、パッと見はあまり実用的でなさそうな車である。この車の存在を知ったとき、私の脳裏に浮かんだのが林警部であった。森博嗣さんの生み出した登場人物の一人の乗る車としては、シトロエンのセダンでは普通すぎるのではないか。森ミステリの登場人物の車には、2CVのような趣味性の高い車の方が似合っているのではないか。そういえば冒頭の語り手であり探偵役の一人である保呂草さんの車はVWビートルだったはずだ。登場人物たちの乗っている車がビートルと2CVだったら面白い。
 そう考えると確かめたくなってしまった。林警部はシトロエンの何の車に乗っていたのか。そもそも車種の記述があったのかどうか。

 結論から言うと、『黒猫の三角』にはこの問いの答えは書いていなかった。ちなみに三作目の『月は幽咽のデバイス』まで読んだが、林警部の車についてはシトロエンという記述しかなく車種は分からない。彼の部下である七海さんの車については、セリカとの記述があった。セリカチャイルドシートである。ちょっと面白い。
 シトロエンという記憶に間違いがなかったことは嬉しい。この先シリーズを読み続ければ、どこかに答えはあるのだろうか。むしろ著者の過去ブログを読めば答えが書いてあるのではないかという気もしてきた。しかしブログで答えを知ってしまうのは釈然としない。とりあえず引き続きシリーズを読み返そうと思う。

黒猫の三角

 上記のような不純な動機で読み始めたが、やはり読んでみるとVシリーズは面白い。『黒猫の三角』は思い切った趣向で書かれたミステリであるが、10年以上ぶりに読んだにも関わらず、その趣向も犯人もばっちり覚えており、ミステリ的な驚きを楽しむ読書とはならなかった。初読時にはその犯人にものすごく驚いた気がするが、犯人を知った上でその犯人の言動を追うような形で読むと、初読時とはまた違った面白さを味わえる。そして何よりVシリーズの面白さは、登場人物たちの掛け合いやその世界観であり、それらはミステリ的なネタバレをしていようが色褪せない。

 それにしても、改めて驚いたのは、登場人物たちの年齢である。初読時、つまり中学生のころには、登場人物たちのほとんどが自分よりも年上だった。一番歳が近かったのが、シリーズの探偵役の紅子さんの息子(12歳)であった。それが今ではどうか。保呂草さんや紅子さんと同年代である。大人だと思っていた登場人物たちと同じ年代になってしまったのだ。これにはちょっとびっくりした。自分はVシリーズに夢中になった中学生のころからほとんど成長していないように感じる。あの頃から長い時を経たが、大して知識量は増えていないし、思考も高度化していない。何よりも素敵な大人になっていない。時の流れは残酷である。自分が凡人であることを突きつけられる。
 しかし嘆いている時間はない。我々は、彼ら(本の中の登場人物たち)と違って、流れる時の中を生きていかねばならない。時間は有限、読める本も有限。本を読みたいのならば、読まねばならない。

黒猫の三角 (講談社文庫)

黒猫の三角 (講談社文庫)

2019年3月読書まとめ 読書メーターより

 小説ばかり読んでいた一ヶ月だった。しあわせ。学生時代のときと同じくらいのペースおよび量を読んだ気がするが、11冊か。意外と少ない。しかし、これだけ小説を読むことが、この先の人生であと何回あるだろうか。本を好きなだけ読める人生は、思っていたよりもずっと短いのかもしれない。

3月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4493
ナイス数:26

アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)
読了日:03月02日 著者:栗原 康
贖罪贖罪感想
すごく面白かった。帯にある「世紀の大傑作!」という煽り文句がまさにぴったり。物語を愛する少女が作り上げた物語により離れ離れになってしまった恋人たち。その後、恋人たちを戦争が襲い、少女は罪を贖うかのように看護婦を志す。少女はやがて作家となるが、書くことで彼女の罪が赦されることはあるのだろうか。
読了日:03月02日 著者:イアン マキューアン
北氷洋: The North Water (新潮文庫)北氷洋: The North Water (新潮文庫)感想
北氷洋捕鯨を舞台にしたエンタメ小説。かなり暴力的で陰惨。しかしその暴力的な人間たちや厳しい自然の向こうにある光景に、人生の真髄を見た気がした。捕鯨小説繋がりで『白鯨』を読み返したくなった。
読了日:03月08日 著者:イアン マグワイア
元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ)元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ)感想
前漢時代の中国を舞台にした本格ミステリ。読者への挑戦が2回もある本格派。キャラクター造形と、数多の引用文献を引いての思想合戦という構成によって、独特の雰囲気と後読感がある。こんなミステリ初めてだ。小説の世界の広さを感じさせる一冊。
読了日:03月10日 著者:陸 秋槎
黒猫の三角 (講談社文庫)黒猫の三角 (講談社文庫)
読了日:03月15日 著者:森 博嗣
白昼の悪魔 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)白昼の悪魔 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:03月21日 著者:アガサ クリスティー
最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)感想
すごい小説。
読了日:03月23日 著者:ミランダ ジュライ
ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity? (講談社タイガ)ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity? (講談社タイガ)
読了日:03月24日 著者:森 博嗣
血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)
読了日:03月27日 著者:森 博嗣
人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)感想
Vシリーズ2作目。七海刑事が本格的に登場、シリーズの雰囲気が盛り上がってくる一冊。
読了日:03月29日 著者:森 博嗣
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)感想
再読。何故か初読時よりもずっと面白く感じて一気読み。
読了日:03月31日 著者:伊藤 計劃

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