読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

MENU

新書

『迷宮百年の睡魔』(森博嗣著)【読書感想】

今週のお題「読書感想文」 森博嗣さんの長編SFミステリ、女王シリーズの二作目『迷宮百年の睡魔』を再読しました。 これがなんとも捉えがたい一冊で、うまく感想文が書けそうにない。 前作と同じく人間のミチルと初期型ウォーカロン(ロボット)のロイディの…

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅著)【読書感想】

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅著)を読んだ。 岩波新書から出版されており、第二次世界対戦におけるドイツとソ連の戦争についてコンパクトにまとめられた一冊である。 以下、目次。 はじめに 現代の野蛮 第一章 偽りの握手から激突へ 第一節 スターリン…

共働きに救いはあるか?『夫婦幻想--子あり、子なし、子の成長後』(奥田祥子著)

「妻は変わってしまった」「夫に絶望した」--。取材対象者の多くが口にした言葉からは、目の前の現実から目を背け、「幻想」の中にだけにしか夫婦像を描けない男女の悲哀を感じずにはいられなかった。と同時に、苦悩し、憤りながら、それでもなお、夫婦に…

旅行の準備、本の準備。『活字のサーカスー面白本大追跡ー』椎名誠

旅行で一番楽しいのは準備をしている時間である、というような事を時々聞く。 確かに、押入れの奥から旅行用のカバンを引っ張り出してきたり、何を着ていこうか迷っていたりするうちに、旅行への期待は否が応でも高まってくる。そんな準備の中でも、一番悩ま…

森博嗣さんの新書エッセイ『ジャイロモノレール』(森博嗣著)【読書感想】

森博嗣の新書を2冊続けて読んだ。趣味的な夢の効用を解く『夢の叶え方を知っていますか?』と2018年の新刊『ジャイロモノレール』の2冊である。本のテーマとしては2冊とも通底しており、本当に自分の好きなことをしよう、ということである。 本当に好きなこ…

図書臨時増刊2018『はじめての新書』

出版前から気になっていた冊子をようやく手に入れることができた。岩波書店のPR誌である『図書』の臨時増刊号『はじめての新書』である。岩波新書創刊80年を記念して作られたA5サイズの小さな冊子である。インターネットを通してその存在は知っていたが、地…

ちょっとガラパゴス行ってくる。『ガラパゴス諸島 「進化論」のふるさと』【読書日記】

タイトルどおりです。 年末年始、ガラパゴス諸島へ行ってきます。新婚旅行です。リア中の極みです。いいでしょ? ちなみに、初めての海外旅行でもあります。もう何を用意したら良いのかも分からず、出発までの時間をどう過ごせば良いのかも分からず、こうし…

『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(岡田尊司著)【読書感想】

私は極度のめんどくさがりである。 しかもその度合いが年々上昇している。仕事が面倒くさいのはともかくとして、掃除や洗濯といった家事も、趣味友達に会うことも、ブログを書く程度には好きな読書も、はたまた食事をすることさえも面倒くさい、と思うことが…

週末読んだ本【読書日記】

土曜日。久しぶりに一日中本を読んでいた。 このごろでは滅多になくなってしまったことだ。 記念に、というわけでもないが、今週末に読んだ本を記録しておこうと思う。 『ずっとお城で暮らしてる』シャーリー・ジャクスン 桜庭一樹のエッセイで紹介されてい…

自分に足りていない能力について。【読書日記】

森博嗣さんの新書を立て続けに読んだ。 2003年初版ながら最近も新聞広告に載っていた『「やりがいのある仕事」という幻想』と2017年1月初版の『夢の叶え方知っていますか』という朝日新書である。 自分には「やりがい」も「夢」もないんだけど、と軽く絶望し…

料理研究家の研究。阿古真理『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』【読書感想】

どちらかといえば料理は好きだ。 だけど料理の本を読んだり、自炊関係のブログやテレビの料理番組を眺めるはもっと好きだ。 レシピ本を見ながら料理をすることよりも、ただただレシピ本を眺めていることの方が多い。 残業帰りに半額総菜やらインスタント食品…

「世界は僕を特別扱いしない」から始まる自由。『不自由な男たち――その生きづらさは、どこから来るのか』小島慶子・田中俊之

まったく。年齢性別、所得の多寡や家族の有無にかかわらず、生きづらい世の中ですね。 一若者としては、この先幸せになれる気がまったくしない。今日という日をだましだまし生きて、歳をとり、そして死んでいくのだろうなと思う。 『不自由な男たち――その生…

「定番だけじゃ人生つまらなくない?」『ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。』

今週のお題「読書の夏」 『ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。』、長い題名だ。だけれども、惹かれる題名である。 今のうち、とはいつのことか。それははっきりしている。14歳。河出書房出版社の「14歳の世渡…

詩のこころとは? 嶋岡晨『詩のたのしさ』

詩の本を読んだ。嶋岡晨『詩のたのしさ』(講談社現代新書)である。平易で読みやすく、詩の引用も多々あり、そしてそれらの詩の作者別の検索表が載っており高評価。個人的には、好きな詩である高村光太郎の『道程』の引用があり嬉しかった。高村光太郎の詩…

広い部屋を持て余す日々。西和夫『二畳で豊かに住む』

学生時代、初めの二年は6畳、その後は8畳の部屋に住んでいた。就職を期に引っ越した先のアパートは、六畳二間の2DK。43平米ほどある、一人暮らしには広すぎる部屋である。南向きの角部屋で、明るさと和室があることが気に入ってここの部屋に決めた。 住んで…

経済成長の先、われわれはどこへ行くのか。『路地裏の資本主義』平川克美

『路地裏の資本主義』を読んだ。角川SSC新書の一冊。普通の新書よりも一回り大きく、行間も広い。新鮮。 本書は資本主義とその周辺について考えるエッセイである。専門書ではない。「路地裏」という題名があるからと言って、直接的に路地裏について語られる…

本が読みたくなる 成毛眞『面白い本』

私は今、とても難しい状況に置かれている。 最後の学生生活を満喫すべく本を読みたい。 が、引っ越しに向けて本を処分しなければならない。 こんなとき、人はどうすればよいのだろう。迷った末、とりあえず図書館へと足を運んだ。本は増えず、本を読める。図…

『神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話―』なだいなだ【読書感想】

海外ニュースを見る。嫌な事件が多い。 宗教とは何か、考える。どうして人類は宗教を生みだしたのか。個人的には個々の宗教の教義よりも、「宗教」という仕組み自体がどうして生まれたのか、社会および個人のなかでどのような役割を果たしているのか、という…

別に検索したくはないけれど。東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』

読んだ。面白かった。いろいろ考えた。 部分的には納得できることばかり。 ただし、全体を見た時、アレと思うところがある。目次は以下。 0 はじめに 強いネットと弱いリアル 1 旅に出る 台湾/インド 2 観光客になる 福島 3 モノに触れる アウシュヴィッツ 4…

『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』 矢部武

人は歳をとる。 私もあなたもいつかは老人となる日がやってくる。もちろん老人になる前に亡くなる可能性もあるが、祖父母が存命であることや医療技術の進歩等を考え合わせると、あと50年ぐらいは軽く生きてしまう気がしなくもない。50年か……さて、50年後、私…

今流行りのアドラーを読んでみた!

どうやら世間ではアドラー心理学が流行っているようだ。きっかけとなったと思われる岸見一郎著『嫌われる勇気』は我が田舎町の本屋でも、入口付近に山積みされている。 6月1日16時現在、『嫌われる勇気』のアマゾンのカスタマーレビューは294件、評価は5つ星…

人生初の廃墟本。 『総天然色 廃墟本remix』 中田薫・文 中筋純・写真

何が「総天然色」なのか、何が「remix」なのか。 そう思いながらも、手に取りペラペラめくるうちに、何かがピンときて気づいたら購入していた。 疲れていたのかもしれない。 が、読む。 興味深い。いや、感慨深い。総天然色=オールカラー? 廃墟に興味はあ…

日本に生まれたんだから幸せに思え?『世界「比較貧困学」入門 日本はほんとうに恵まれているのか』 石井光太

ネット上でもリアルでも、経済的な愚痴をこぼす人に対して、「でも、アフリカなんかに比べたら、日本に生まれただけで幸せなんだから」という人がいる。 言われた方は、確かに日本は経済大国でもあるので、「それはそうだけど」と答えるしかない。 言いたい…

『~果てしない孤独~独身・無職者のリアル』 関水徹平・藤原宏美

スネップ、という言葉がある。というか近年開発された。本書は、そのまだ新しい概念「スネップ(孤立無業者)」を、実例を交えて解説、紹介する本である。 スネップ(SNEP)とは、経済学者の玄田有史教授が提唱した言葉で、文字通りには、孤立した(Solitary…

『死にたくないが、生きたくもない。』 小浜逸郎

世の中には秀逸なタイトルを冠した本がある。 『死にたくないが、生きたくもない。』、この題名を見た時、まさしく衝撃を受けた。自らの心情をぴたりと表わす言葉がそこにはあった。 「死にたくないが、生きたくもない」 思わず口の中で転がしたくなる。語呂…

クーポンで本を買う 『哲学入門』 戸田山和久

東京駅のいくつかの店舗で使えるクーポン券を頂いた。 額にして1000円分。 一人暮らしの学生にとってはなかなか嬉しいお小遣いである。 クーポン券を使える店舗の中に書店を見つけ、1000円分すべてを書籍に充てることを決意した。しかし実際書店へ行くと1000…

就活生としての私と『無痛文明論』【読書感想】

ちょっと考えてみた。 というのも、就活に口出ししてくる親に、自分では珍しいぐらいにイライラし、読んでいる本を通して自らを客観視する必要を感じたからだ。就活生の皆さんは、親からの口出しをどのように乗り切っているのだろう。 以下、読書感想という…

『いますぐ書け、の文章法』堀井憲一郎

自意識過剰なため、良い文章を書きたいと常々思っている。 なので文章の書き方的な本をみると、ついつい買ってしまう。 そのようにして買った本の一つが堀井憲一郎『いますぐ書け、の文章法』。 さっそく怒られた。 文章を書くからには、きちんとした文章を…

「老い」の発見 『老いの歌―新しく生きる時間へ』小高 賢

「老い」を詠むのに短歌はぴったりのツールである。 なぜならば、短歌は「私」を詠むのに適しているからだ。 俳句は「私」を詠み込むには短すぎ、小説では「私」以外の人間の視点も必要だ。 定型であることは、表現を狭める枠ではなく、むしろ表現することの…

あの年の冬はもっと寒かった 鴨下信一『誰も「戦後」を覚えていない』

感動とは何か。 世界観が反転するような心の動きである。 10年程前に流行った「感動=泣かせる」の図式を私は信じない。 そんな私が大学生になってから最も「感動」した本のなかに、坂口安吾『戦争と一人の女』がある。 2012年映画化もされた。 残念ながら見…