読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

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エッセイ

『インターネット文化人類学』(セブ山著)【読書感想】

『インターネット文化人類学』という本を読んだ。はてなブックマークにも時々名前のあがる、「オモコロ」などのネットメディアで活躍するライター、セブ山さんによる、インターネットに生息する人々の生態を解説する一冊である。 この本の裏表紙の著者紹介に…

『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』J.D.ヴァンス

アメリカという国は近くて遠い国だ。太平洋を挟んで隣国であり、我が国の社会経済に多大な影響力を持っている。テレビをつければ毎日のように大統領の名前が登場するし、ホワイトハウスやニューヨーク証券取引所の映像もよく目にする。それだけ身近な国であ…

旅行の準備、本の準備。『活字のサーカスー面白本大追跡ー』椎名誠

旅行で一番楽しいのは準備をしている時間である、というような事を時々聞く。 確かに、押入れの奥から旅行用のカバンを引っ張り出してきたり、何を着ていこうか迷っていたりするうちに、旅行への期待は否が応でも高まってくる。そんな準備の中でも、一番悩ま…

家電の断捨離 稲垣えみ子『寂しい生活』【読書感想】

稲垣えみ子著『寂しい生活』というエッセイを読んだ。著者の本を読むのは2作目で、1作目は今年のはじめに読んだ『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』である。家電なし生活を送る著者の食生活についてのエッセイであり、著者の軽妙な語り口に乗…

図書臨時増刊2018『はじめての新書』

出版前から気になっていた冊子をようやく手に入れることができた。岩波書店のPR誌である『図書』の臨時増刊号『はじめての新書』である。岩波新書創刊80年を記念して作られたA5サイズの小さな冊子である。インターネットを通してその存在は知っていたが、地…

私は幸せなのか。アラン『幸福論』【読書と人生】

入籍当日。遠距離の婚約者に会うため、バスと電車を乗り継ぐ中、アラン『幸福論』をパラパラと読んでいた。 プロポ(哲学短章)というそれぞれ独立した小編が積み重なってできた本書は、どこからでも読めて、移動中に少しずつ読むのにはもってこいだ。岩波文庫…

風呂読書と自己否定 つげ義春『新版 貧困旅行記』

11月。十分すぎるほど寒くなってきた。寒さに耐えられない夜は、ガス代を気にしつつ湯船にお湯を張る。 せっかく湯船に湯を張るという贅沢をするのだから、風呂の時間をめいっぱい有効に使いたい。となると風呂に文庫本を持ち込むに限る。風呂読書については…

『死をポケットに入れて』 チャールズ・ブコウスキー、老年期の日々。

読んでまず驚いたのが、主人公である著者が老いていたことである。 予備知識を持たずに、文庫本後ろのあらすじも読まずに、著者の名前と題名だけを確かめてページを開いたのが悪かったのだが。いや、予想もしなかった文章に出会えたという意味では幸運か。 …

『頑張って生きるのが嫌な人のための本 ゆるく自由に生きるレッスン』海猫沢めろん

魅力的な題名だ。『頑張って生きるのが嫌な人のための本』。再読だが、二回ともこの題名にやられた。自己啓発本だろうと思いつつも思わず手にとってしまう。だって頑張って生きたくないんだもん。そのうえ、頑張って生きたくない、と自覚してしまう真面目さ…

『疲れすぎて眠れぬ夜のために』内田樹【読書感想】

学生の本分である学業で忙しいのと、にも関わらず、ドストエフスキーの長編小説(『白痴』。新潮文庫で300ページくらいしか読んでいないけど、なんだか恋愛小説っぽい。面白い)を読み始めてしまったので、なかなかブログの記事を書く時間が取れない。ぼおっ…

開高健『人とこの世界』【読書感想】

年末から年始にかけて読んでいた本の感想を書いておこうと思う。開高健の人物エッセイ『人とこの世界』。 人物エッセイと書いたが、適当な語が見当たらない。裏表紙のあらすじには「人物フィクション」という言葉がある。著者は、作家や詩人や芸術家について…

色気より食い気なクリスマス 内田百閒『御馳走帖』を読み返す。

クリスマスである。今年は24日25日ともに平日であることもあり、普段通りに過ごしたという友人が多かった。私も例に漏れず、どちらの日もいつも通り学校にきて、実験して、論文をまとめていた。ネットを見ると、リア充を羨むあまりクリスマスまで憎むような…

正直な読書エッセイ 池澤春菜『乙女の読書道』

先日晒した本棚写真。今更ながら恥ずかしくなってきた。 本棚の写真が印象的な読書エッセイを読んでいる。ちょっと前から気になっていた読書エッセイ『乙女の読書道』。題名に「乙女」って。なんだか恥ずかしい。しかし表紙写真――著者と思われる若い女性とそ…

読書週間!松岡正剛『読書術』

図書館で「読書週間」のポスターを見た。「公益社団法人読書推進運動協議会」によると2014年の読書週間は10/27‐11/9である。標語は「めくる めぐる 本の世界」。標語にはあまり詩的センスを感じないが、ポスターのイラスト(子どもが木造帆船の傍らで本を読ん…

辺見庸『反逆する風景』【読書感想】

辺見庸は劇薬だ。物質と情報で満たされ現状に甘え切った現代日本に生きる私の頭をガツンと殴ってくれる。 先進国に倦んでいる傲慢さ。安易に「死にたい」と口にする甘さ。良薬口に苦し? 自らの生活を振り返る。口腔いっぱいに苦みを感じる。 私を取り巻く豊…

時は21世紀。『それでも、読書をやめない理由』デヴィッド・L・ユーリン(柏書房)

ブログを書く人間にはブログ論好きも多いようだ。 という私もそのようなエントリーがあれば、ついつい読んでしまう。本を読むことが三度の飯と睡眠並みに好きな私は読書論も大好きで、本に関わるエッセイや新書は好きなジャンルの一つである。 先日、『それ…

『貧乏は幸せのはじまり』岡崎武志

貧乏性である。 実際貧乏じゃないか、そして貧乏から抜け出せるあてもないじゃないか、と言われたらその通りでもあるのだが、経済状況如何に関わらず貧乏性であろうと思われる。 何故なら、物心ついたときから貧乏性であったから。 具体的な理由は分からない…

『誰にでも、言えなかったことがある。 脛に傷持つ生い立ち記』 山崎洋子

最近、ちょっとした(本人からすれば重大な)失敗をした。私は後ろ向きな人間なので、そのことについてくどくど考えている。出来るだけいろいろな視点から検討してみているのだが、気がつけば毎回同じような思考パターンにはまり、人生失敗したな、という結論…

中島らものエッセイを読む 『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』【読書感想】

中島らも『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』を購入。中島らもという書き手を知ったのは、中学生のとき、母親の本棚を覗き見したときであった。 『心が雨漏りする日には』という本を見つけた。当時『症例A』などの精神病系ミステリやサスペンスを好んでいた…

『死にたくないが、生きたくもない。』 小浜逸郎

世の中には秀逸なタイトルを冠した本がある。 『死にたくないが、生きたくもない。』、この題名を見た時、まさしく衝撃を受けた。自らの心情をぴたりと表わす言葉がそこにはあった。 「死にたくないが、生きたくもない」 思わず口の中で転がしたくなる。語呂…

美しいものには毒がある 『偏愛文学館』倉橋由美子

好き嫌いという次元を超越して凄いと感嘆するしかない作家はそんなに多くない。 倉橋由美子は私の貧弱な読書録の中でも一段と際立った場所で存在感を放っている。彼女の物語は読むたびに圧倒させられる。既存の小説のかくあるべしという規格から二回り、三回…

『精神のけもの道』 春日武彦

吉野朔実=漫画、という背表紙の文字に惹かれた。 吉野朔実、『本の雑誌』に読書エッセイ漫画を連載している漫画家であり、『悪魔が本とやってくる』といった作品がある。 そして私は密かな吉野朔実ファンである。 この本は春日武彦の精神エッセイ一編に、吉…

秘密=自らの読書歴 『漂流 本から本へ』筒井康隆

今週のお題「ナイショにしていたこと」ナイショ、すなわち秘密。 とある物事を秘密とするのは様々な理由があろう。 私の場合、恥の意識ゆえに秘密とすることが多い。恥ずかしいから誰にも言えない。 その言えないことのひとつが、読んできた本である。 本棚…

私的自己啓発本解釈と『置かれた場所で咲きなさい』渡辺和子

自己啓発本は好きですか。私は好きだ。もちろん自己啓発本といっても様々な顔形を持っている。 軽い新書から3000円以上する単行本。 ライフハックやキャリア論から生活習慣に根付いたもの。 古いところだと論語や各種宗教経典もそうだろう。 新しいところな…

本と共に生きる 『強く生きるために読む古典』 岡敦

どうして古典作品を読まねばいけないのか。 このような議論は今まで星の数ほどされてきただろうし、これからもされるだろう。 私個人の見解としては、読む必要のあるべき本など一冊もない。 それが古典であっても、今年のベストセラーであっても。ではなぜ私…

『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』 保坂和志 

保坂和志のエッセイである。エッセイにジャンルがあるとすれば、人生論思索系である。 題名に惹かれて手にとった。「三十歳まで『なんか』」である。なかなかに刺激的だ。そして懐かしい、共感。 私にも夭折願望というものがあった。 惜しまれつつ死にたい、…

読書欲の肯定 『本を読んだら、自分を読め』小飼弾

読んでいて気持ちの良い本、というものがある。 大抵、自分の価値観や意見を肯定してくれるような本である。 本書『本を読んだら、自分を読め』は読書好きな読者にとって、とても気持ちのよい本だ。 なぜなら、自らの読書欲を徹底的に肯定してくれるからだ。…