読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

MENU

魚図鑑の魅力 『小学館の図鑑Z 日本魚類館 精密な写真と生地の写真と詳しい解説』【読書感想】

 魚好きだ、と、言っている割には、私の本棚には、いわゆる総説的な魚図鑑がなかった。なので小学館から大人向けの魚図鑑が出ると聞いたときには、1も2もなく予約した。小学館の図鑑、小さい頃は夢中で読んでいた。ちなみに友人の子供の1歳児も、小学館の図鑑NEOシリーズの魚図鑑が大好きで、「とと、とと(魚のこと)」と毎日のように読んでいるらしい。そう魚図鑑の面白さは1歳児にも伝わるのだ。

 予約の末に購入したのは『小学館の図鑑Z 日本魚類館 精密な写真と生地の写真と詳しい解説』である。編・監修は、中坊徹次先生。値段は6,900円。これを高いと見るか安いと見るか。
 一時期、同じ編・監修者の『日本産魚類検索 全種の同定』(4213種掲載)を買おうかと迷ったことがあるのだが、こちらは30,000円。しかも2冊組。それに比べるとだいぶ安い。検索図鑑は持っていても使いこなせないだろう、という、冷静な判断を下し結局購入はしなかった(しかしディスプレイように1組持っておきたい願望がある…)。

 さてこの本、図鑑といっても大版ではない。なんとA5サイズなのだ,しかしコンパクトとは言い難い。何せページ数は500ページ越え。文庫本などとは違い、ページの紙もしっかりしてるので、その分厚みがある。どのくらいだろう。少なくとも今、目の前の本棚にあった森博し作『有限と微小のパン(講談社文庫版)』よりは厚かった。
 そして中身はさすが大人向け。もちろん魚の写真もいっぱいあるが、それ以上に文章が多い。大体ページの上半分が魚の写真を占め、その下半分に魚の解説が載っている。食用魚も日食用魚も、海水魚も淡水魚もしっかりと載っており、帯によると全部で約1,400種ほど掲載されているらしい。写真だけではなく図版も充実しており眺めているだけでも楽しい。そして巻末には用語の解説と参考文献がガッツリとなっており、さすが大人向けだなと思った(参考文献のページだけで16ページある)。

 ところで、魚図鑑の一番良いところは、魚の解説文の最後に味の解説が載っていることである。食用、有用などと簡潔に書かれていることもあれば、有毒、猛毒といったことや、美味しい、煮付けに向くといった具体的なことが書いてあったりして、読むだけで想像力が膨らんでくる。
 なかには食用に特化した図鑑もあったりする(例えば、藤原昌高『美味しいマイナー魚介図鑑』。この本、大好き!マイナーじゃない魚図鑑も是非出していただきたい…!)。

 今夜の夕食は鯖のみりん干しであった。海の近くの、魚の直売所がある道の駅で買ったもので、マサバかゴマサバかは分からないがないが、多分タイセイヨウサバではないと思う。
 早速、図鑑でサバを引いてみる。マサバのところを、読むと、

焼き魚、煮魚、しめさばで食される。九州では刺身も食べるが、三陸から関東ではアニサキスの寄生よって生で食べない。北陸の塩さばやへしこが知られる。旬は秋〜冬。

 としっかりと書いてある。そう、こういう記述!これが好きで私は魚図鑑を読むのだ。幼い頃から他の動物図鑑や恐竜時間にはない魅力を、魚図鑑に感じていた。
ただの食いしん坊な子供だっただけかもしれない。
 しかし、まぁ、よおかげで魚を楽しめる大人になって良かった、ということで。

 最近、魚料理を食べるたびにこの図鑑をひいている。人生を充実させるには、こういうひとときが大事なのかもしれない。

一人称で語るお前、お前は誰だ…? 神林長平『絞首台の黙示録』【読書感想】

ある日の仕事中、本を買おうと思い立った。ストレスがたまっていた。ストレスの溜まると本屋に行きたくなる。
ストレスというのは仕事だけが原因では無いことは、薄々わかっていた。人生に対する不全感。あーなんでこうなるんだろうなぁ自分の人生。何がやりたいのか分からない。環境が変われば何か分かるのかもしれないと思って、結婚したり転職したりもしたけれども、結局分からず。
もちろんこの不全感は本によって救われることでは無い事は承知している。
しかし少なくとも本に集中している間は嫌なことを忘れられる。最も、最近は集中力がびっくりするほど低下しており、好きなはずの本にすら集中することができないという悩みも抱えているのだか。

閑話休題
仕事帰りの本屋。そこで見つけたのがこの本である。新刊本が並ぶ平台の上に1冊だけあった神林長平の絞首台の黙示録。神林長平はSF作家と言うイメージが強かったのだが、(事実日本を代表するSF作家だが)、その文庫本カバーの表紙から推測するに物語の舞台は現在日本のようで、裏表紙の紹介文を見ても現在もののようであった。そこに惹かれた。彼の書く現代劇がみてみたい。少し前に神林長平の第一長編『あなたの魂に安らぎあれ』を読んだことも影響しているかもしれない。

帰宅してから早速読書。面白かった。一気に読み終えた。人生に対する不全感だって、どうでもよくなるくらい。

物語の場面は死刑執行のシーンから始まる。一人称で書かれており、どうやら主人公の俺はどうやらこれから絞首刑を執行されるらしい。
冒頭のシーンを読んで、なぜかドグラ・マグラを思い出した。あの小説は、時計の鐘の音とともに、精神病院の閉鎖病棟の中で、主人公が目覚めたところから始まったはずだ。
ドグラマグラの彼は記憶を失っていたはずだ。だが、この本の主人公乗れば記憶を失ったわけではない。どうやら彼は自分が受けるべき刑罰を十分に承知しており、自分が死刑になるのは当然だと理解していた。しかし頭では死刑のことを理解していても、自らの死を前にした体は正直だ。彼の身体、そして意識は叫ぶ。死にたくない、殺されたくない!
読みながらドキドキした。死にたくない、殺されたくない、死刑になんかなりたくない。彼にどっぷり共感した。
冒頭の場面ではなぜ彼が死刑になるのか、彼が何を犯したのかわからない。彼は冷静で、祈祷師の前で、理屈によって神を否定してみせたりもする。しかしいくら冷静に納得してみようとしても、恐怖は恐怖である。だからこそ読んでいて怖かった。
そして、その恐怖に対する読者の共感が、この物語の一つの伏線となっている。


さて。俺は死刑になった。しかし物語は続く。場所が変わり一人称の主人公が入れ替わり、物語は混乱していく。

ここから怒涛の展開だったが、舞台は新潟の一軒家の中、と、舞台装置はなかなかに平凡だ。しかしそこはやはり日本SFの大家、神林長平。彼の仕掛けた仕掛けが一筋縄ではいくわけがない。

物語と事象はどんどん複雑になっていき、結局、誰が存在するものなのか、この意識はいつの意識なのか分からなくなっていく。
SFと言えばお馴染みのクローン技術やら平行世界やらが複雑に絡みあい、そこに人間らしい感情や思考、そして動物としての人間のリアルな肉体感覚などが色彩を添えながら物語は進んでいく。
感情移入しながら読んでいた登場人物が実在しでいなかった、といった驚きも待っていたりする。ああ、存在って何だ?

お前は誰だ。
この物語を表す一言は、これだろうと思う。この小説は、これは意識と存在をめぐる一大スペクタルなのである。意識があることの不思議、存在することの不思議、なぜ私はここにいるのか。
思えばずっと、神林長平は常にそのことを私たち問うてきたのかもしれない。

とても刺激的な読書体験であった。おすすめ。家にはまだ何冊か未読の神林長平の文庫本がある。これらも早く読まないと。不全感に悩み、ネットの海で貴重な時間を浪費していてもしょうがない。世の中には私が出会っていない面白い本がまだまだある。

7年振りの家計簿購入。

引っ越したばかりの町を探検。近所のショッピングモールに大きな本屋があることを発見して、飛び上がるほど嬉しい。以前住んでいた町は、車で1時間半ほど走らなければ、満足できる大きさの本屋はなかった。映画館も近くにあるので、今後の生活は娯楽費が上がりそうだ。

さっそく見つけた本屋に入る。しかし出来るだけ本棚に並ぶ本たちからは目を離すようにする。見たら本が欲しくなることは分かりきっている。
私が本屋に寄ったのは家計簿が欲しいからだ。何故家計簿が欲しいかといえば、節約したいからだ。無限に購買欲を刺激する本屋の本棚は、節約の敵でしかない。

家計簿コーナーには、様々な家計簿がならんまいる。一冊ずつ手に取っては吟味する。市販の家計簿をつけるのは実に7年振りだ。引っ越しもしたことだし、久しぶりにつけてみようかと思ったのだ。7年前とはお金の使い方も変わっているだろうし。
にしてもどんな家計簿が自分に向いているのだろう。こればっかりは実際に使用してみなければ分からない。

吟味に吟味を重ねた結果、『LDK家計ノート2018』を購入した。
正直、見た目(赤い派手な表紙)はあまり好きではないのだけれど、『3000円投資生活』の著者で家計再生コンサルタント横山光昭さんとのコラボ商品であり、1年を3カ月ごとの4クールに分け貯蓄習慣を身につけるというコンセプトであることに興味を惹かれた。1月から始まる1クール目のテーマは「把握する」。家計簿が久しぶりすぎて、家計を把握していない私にはぴったりだと思った。

さて。節約のための家計簿を580円出して買ったわけである。この出資が浪費にならないよう、しっかりと書く習慣を身につけたいと思う。