読書録 地方生活の日々と読書

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映画館へ行ってきた! 『LIFE!』 ベン・スティラー監督

二日酔いの朝は何もしたくない。
痛む頭で就活についても、人生についても考えたくない。
でも、それではいけないだろう。
なんといっても日曜日。二日酔いでせっかくの休日を棒に振るのはもったいない。
ということで二日酔いでも楽しめるレジャー、映画館へ行ってきた。
観てきたのは『LIFE!』ベン・スティラー監督

雑誌「LIFE」のネットへの移行は日本でもニュースになった。2007年のことである。
紙媒体は廃止。一度も読んだことはなかったが、時代の流れの残酷さを思った。
そんなLIFE誌の社訓は以下である。人生に前向きになれるような言葉が並んでいる。これだけでお腹いっぱい。映画の中でも繰り返し出てくるキーワードである。

世界を見よう
危険でも立ち向かおう
壁の裏側を覗こう
もっと近づこう
もっとお互いを知ろう
そして感じよう
それが人生(LIFE)の目的だから

さて本映画の主人公、ウォルター・ミレットはライフで16年働くサラリーマン42歳独身。写真ネガの管理係という地味な部署で働いている。
社内ではLIFE誌廃刊に伴うリストラの嵐が吹き荒れるなか、最終巻の制作を行っていた。
写真家のショーンから「表紙には25番目のネガを使うように。その写真にLIFEの真髄がある」と言われ、ウォルターがネガを探すが、25番目の写真だけが抜けていた。探しても探しても出てこない25番。
写真家がまだ持っているのではと思い、連絡を取ろうとするも、世界を飛び回る写真家ショーンはなかなかつかまらない。そこで彼は、自費でショーンの足跡をたどり、ネガを探す旅に出る。

以下ネタばれ。

ウォルターの空想癖は、自らの日々変わり映えのしない人生を充足させるためのものだった。
十八で父を亡くし、母と妹のために働き続けた人生である。
「こんな人生を変えたい」と心のどこかで思いつつも、堅実に歩き続けた。
そんな彼が、一枚の写真のためだけに旅に出ることを決意し、グリーンランド行きの飛行機に飛び乗るシーンは爽快である。
旅先で、彼は空想よりもはるかに壮大で危険な光景を目の当たりにする。
選択しは常に彼の中にある。彼は行動することを選んだ。

苦労の末(ヒマラヤ登頂の末)、ウォルターは写真家ショーンに出会い、ネガの行方を聞く。
ネガは思ってもみない場所、なんとウォルターの財布の中にあったのだ。しかもその財布は自宅のごみ箱の中。
旅は、ある意味、徒労だった。
けれども彼はヒマラヤの山中でユキヒョウを見、高原でサッカーに興じる。
ショーンは、その瞬間、確かにとんでもない人生を歩んでいた。

けれども本作の主題は「人生を詰まらないと思うのであれば、今までやりたいと思っていたけどできなかったことをやってみよう」といったことではない。
予告編等を見ると、そんな気がしてしまうのだけれども、人生の真髄は人生における特異的なイベントにはない。

終盤、無くしてしまったと諦めていた25番ネガが見つかる。
そのネガに写っていたのは、ウォルターがLIFE誌につかう写真のフィルムを見ている姿であった。
一心不乱にフィルムを見つめ、没頭する姿。
それは彼がつまらないと思っていた日々の姿である。
世界的な有名誌LIFEは、地味な仕事の積み重ねによって作られていたのだ。

公式サイトにて、ベン・スティラー監督は言う。

この映画のメッセージは、現実を受け止め、毎日の生活を大事にすれば、本や夢で見るよりも充実した人生を手にできるということ。夢は大切だけど、自分の責任は果たさなければならない。想像力は物事が何も上手くいかなかったときに、諦めの気持ちを軽減してくれるものなんだ。

本作の原題は「THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY」
「SECRET LIFE」とは、何を指すのだろうか。
ウォルターが映画で繰り広げる非日常的な冒険譚という見方が正しいのだろうが、私は、彼が日陰部署で積み重ねてきた仕事の日々、を指しているのではないのかと思う。
毎日を大切に。
一見つまらないと思うようなことでも全力で取り組むこと。
そうすれば、ちょっと違った光景を目にすることもできるかもしれない。
昨日の私とは違う私に出会えるかもしれない。
そう、思った。

映像、音楽共に素晴らしかった。
特に写真は、雑誌LIFEに負けないようなセンスある映像が多く、観ていて心地よかった。
原作はジェームズ・サーバー『虹をつかむ男』
なんと1939年に執筆された物語である。
本屋に行くと黄色い文庫本が並んでいる。機会があったら、是非こちらも読んでみたい。

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