読書録 地方生活の日々と読書

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北村薫&宮部みゆき編集のアンソロジー『とっておきの名短篇』と2015年の目標(読書篇)の反省【読書日記】

今週のお題「今年の抱負」

2015年の抱負とさっそくの反省

 今週のテーマは「今年の抱負」。だが、今年の抱負というか目標(読書編)はすでに書いてしまった。

 一、量より質の読書
 二、でも、だらだらとネットしたりテレビ観たりするぐらいなら本を読む
 三、敬遠しないで詩歌とも親しむ


 2015年は12分の1が過ぎたところだが、年始にあげた抱負はすでに守れていない。

 忙しくて本が読めない。にも関わらず、だらだらとネットしてる……

 ダメ人間だ。就職したらテレビを買いたい!と思っていたが、テレビなんて買わない方がいいかもしれない。ダメ人間に拍車がかかるのが目に見える。

 それでも、三つ目の抱負「詩歌に親しむ」は守れているかもしれない。ここ一週間で『現代秀歌』『辞世の句』と短歌系の本を読んだ。『辞世の句』は「死ぬ前に辞世の句を詠んで死にたい」という中二病的思考をもって読んだのだが、どうやら死ぬ直前は余裕がないかもしれないので、辞世の句は元気なうちに読んでおくものらしい(もちろん死の前に詠まれた歌も多くあるが)。何事も準備が肝要だ。
 また、先日詩に関するエントリーをあげたところ、いまだなつき様(id:imada-natsuki)から『今を生きるための現代詩』『作品で読む現代詩史』の2冊をお勧め頂いた。特に『作品で読む現代詩史』という本に興味がある。是非読んでみたい。勧めて頂きありがとうございます。

 最近忙しいので、今まであまり読んでこなかった詩をちょろちょろと読んでいるのだけれど、とても面白い。国語の詩の勉強は大して好きじゃなかった……と思う。興味がなかったのか、好きだったのか嫌いだったのかすらもあまり覚えていない。それが自ら詩集を買って読むようになるとは。歳をとったのだろう、と思う。こういうことがあると、生きているのもいいことかもしれないと思ってしまう。

『とっておきの名短編』を読む

 今、『とっておき名短篇』というアンソロジーを読んでいる。北村薫宮部みゆきが編集したアンソロジーで、シリーズ三作目にあたる。
 普段、シリーズものは頭から読むのだが、何故か一作目から読んでいく気になれず一冊目の『名短篇、ここにあり』と二冊目の『名短篇、さらにあり』は未読ながら、三作目の『とっておき名短篇』を手にとっている。アンソロジーなので三作目から読んでもまったく問題はない……と思う。

 このアンソロジー、まず目次を見て「おっ」と思った。穂村弘蜂飼耳歌人、詩人の名前が並んでいるではないか。こいつ、並みのアンソロジーじゃないな、と思った。事実、収録作はどれもこれも、ひねくれている。わくわくしながらページをめくる。

 アンソロジーを読む醍醐味の一つは、知らない作家に出会えることだ。『とっておき名短篇』で出会った作家に飯田茂実がいる。今まで知らなかった名前だった。舞台や演出など、広く芸術のシーンで活躍されている方らしい。アンソロジーには『一文物語集』という本から、108篇(煩悩の数?)の文章がひかれている。

 読んだ。衝撃を受けた。

 そこにあるのは、詩でも小説でもなかった。「一文物語」。そう、一文で綴られた物語がそこには並んでいた。好きなものを何篇かひこう。

 2

幼馴染みのふたりが年老いて死刑囚の監獄で再開し、一方が執行のために連れ去られる日まで、寝る間も惜しんで、幼年時代の出来事や故郷の風光を思い出しあった。

 19

同僚たちと花見の席で大騒ぎをしている最中にふと、自分が前世でこの樹のしたへ誰かを殺して埋めたことを思い出した。 

 59

彼は日曜日の出来事を詳細にしたためた日記を一冊書きあげるのに月曜日から土曜日までの六日間を費やして、遺産をゆるゆる食いつぶしている。


 どうだろうか。私は、ものすごく好きだ。『一文物語集』には、このような文章が300篇以上収録されているらしい。買いたい気持ちがむくむくと湧いてきている。

 著者はこの文章を25歳のときに書いたという。世の中には若くしてこのような文章を書ける人がいるのだ。自分は何をしているのだろう。一文一文に酔いしれながらも、変な焦りを覚えた。

 いや、焦っても仕方がない。他人と比べるものじゃない。私に出来ることは多くない。人生は有限だ。だから、だらだらネットをせず、一冊でも「これ好き!」と思える本に出会うべく、質の高い読書生活を送っていきたい(……でも、質など気にせず、好きな本を好きな時に好きに読んだ方が幸せな気もする)。

とっておき名短篇 (ちくま文庫)