読書録 地方生活の日々と読書

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2019年の家計簿購入。オレンジページ『1日3分家計簿』

 雨の日。本屋さんに行くと、棚2面に渡りずらっと家計簿が並んでいた。文房具屋の手帳コーナーと並ぶ、秋の風物詩である。もうそんな季節か、さて、今年の家計簿はどうしようかなと思う。

 毎年、家計簿の購入には迷っている。昨年は迷っている間に年が明けてしまった。年が明けるとだんだんと家計簿コーナーは縮小していく。気がついたときには選択肢がだいぶ減っていた。今年はそれは避けたい。

 この季節には、多種多様家計簿に出会うことができる。これだけ家計簿の種類があるということは、それだけ家計の在り方も様々あるのだろう、などと思ってみたりする。そして数多並ぶ家計簿をパラパラとめくってみては、続けられるだろうかと自問自答してみる。
 今までに色々な形式の家計簿を試してみた。500円未満の安いもの、1000円以上もするもの。袋分け家計簿に、節約コラムが充実しているもの。ノートに手作りしたこともあったし、スマホの家計簿アプリも試してみた。しかし基本的に、家計簿は1年に一度しか試さないので、なかなか決定打に出会えない。細かい記入を続けられた年もあれば、挫折してしまった年もあった。それでも30年近く生けていれば、自分が細かく家計簿をつけるタイプの人間ではないことは分かる。細かくつけて、色分析してみたら楽しいだろうなとも思うが、続けられなければ意味はない。家計簿はシンプルなものに限る。

 並ぶ家計簿の中から、簡単さを売りにしているものを手にとってはめくってみる。
 シンプルな家計簿といっても、そこには何種類もの種類がある。自分なりに分類してみると、表頭(家計簿の表の上部)に入るものが「日付」か「費目」かで、大きく2つに分けられる。表頭が「仕分ける項目」になっているものの方が、ページ数が少なくて安価である。表頭が「日付」になっているものは、見開き2ページで一週間分になっている。私は後者の表頭が「日付」になっている家計簿の方が好みである。なぜなら、日付を書かなくても良いから。手間は出来るだけ減らしたい。そこに着目して絞ってみたが、候補はまだ何種類かあった。そんななかから、迷いに迷って、オレンジページの『1日3分家計簿2019』を購入した。

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 決め手は、費目が「食費」「日用品」「お楽しみ・交際費」「その他」と少なく、また週の合計を書くところに「クレジットカードの支払い」という欄があることである。クレジットカードで買ったものをどのように書くべきか毎回迷っていたので、明確な欄があるのはありがたい。

 さて。家計簿は買った。あとはしっかり記入して、ちゃんと振り返り、節約に活かすだけだ。まずは今年の残りの三ヶ月の家計簿をちゃんとつけて、浪費の日々を反省したい。

自立と自炊と家族の食卓

 中学生の私は、早く大人になりたくて仕方がなかった。中学校が好きではなく、中学一年生のGW開けには、すでに一刻も早く卒業したかった。早く大人になって、実家の家を出たかった。そして一人暮らしというものをしてみたかった。自分の生活を自分で運営してみたい。高校時代は、暗黒な中学時代とは一転、とても楽しく毎日を過ごしたが、それでも早く大人になりたいという気持ちは変わらず、進路選択の際に、地元から1000キロほど離れた地方都市にある大学を選んだ。高校の友人の多くは地元の大学か、もしくは東京の大学を目指しており、私の選択は少し驚かれた。一度だけ母親から「東京の大学にしたらいいのに、そうしたら時々、様子見に行ったり掃除しに行ったり出来るのに」と言われ、私は自分の選択が正しかったことを確信した。両親のことは好きだったが、新しい生活に介入して欲しくはなかった。

 こうして18の春、私は実家を出た。

 不思議なほどホームシックにはならなかった。大学の同級生のうち半数以上は、私と同様、実家を出て通っていた。同じような境遇の友人たちと、時間を気にせず学び遊ぶのは楽しかった。実家には年に一回、帰省するかどうかだった。
 はじめての家事も苦にはならなかった。自分の身の回りの家事なんて、いくらでも手を抜くことができた。部屋が散らかっていても、誰にも怒られない。食べたいものを作り食べる。作るのが面倒くさければ、外食するなり、スーパーで惣菜を買えばよい。気楽なものだった。そしてその気楽な生活は性にあった。
 そのうち働くようになった。就職先の職場は映画館もない地方の小さな町で、借りたアパートは44平米の2DK、家賃は4万円だった。築年数はそれなりだが、内装はキレイだった。寝室にスチールラックの本棚を置いた。好きな本を並べた。仕事は大変だったが、やりがいがあった。新しい友人もできた。一年働いて貯めた貯金で中古の普通車も買った(それまでは大学の先輩に譲ってもらった軽自動車に乗っていた)。あれ、もしかして、私今、幸せなのでは、と思ったりもした。

 しかしあれほど焦がれた一人暮らしも、日常になれば、ただの生活に過ぎなくなる。そのうちに、自分のためだけに生きることーー自分のために働き、食事を作り、それを食べる生活ーーに飽きてしまい、結婚した。私は自分でも呆れるほどに飽き性である。実家を出た日から9年が経っていた。

 一人暮らしが二人暮らしになった。新しい日々は、大して変わらないようでもあり、しかし、大きく変わったようでもある。朝起きて、仕事へ行き、帰り道にスーパーに寄り、夕食をつくり、それを食べ、眠る。週に3日洗濯機を回し、週末には掃除をする。時々、布団カバーを洗ったり、季節家電を出し入れする。
 そんな毎日で、変わったことの筆頭は食事である。好きなものを作り一人で食べる生活から、作ったものを食べてもらう生活に変わった。献立、というものを意識するようになった。自炊の際は、冷蔵庫の中身を適当に炒めたり煮たりすることが多かった。大量の野菜炒めを作り、ビールを飲みながらひたすら食べる、という感じだった。もちろん今も冷蔵庫の中身で適当に作ることも多々あるが、結婚から一年ほど経ち、そればかりではダメなのではと思い始めた。もっと名前のある料理を作りたい。常備菜のレパートリーも増やしたい。そして何より、自分の家族には栄養があり、美味しいものを食べて欲しい。

 実家の母の料理は美味しかった。一汁四菜も五菜も食卓に並んでいた。実家には料理本やレシピの切り抜きを挟んだファイルが並んでいる本棚があった。母はよく、それらの本やファイルを机に広げ、一週間の献立に悩んでいた。母の苦労がようやく分かってきた。
 レシピ本を買おう、と思った。自炊は自己流だったので、出来るだけ基本的なことが載っている本を買おう。料理用のノートとファイルも用意しよう。私達の家族の食卓の形はまだ定まっていない。これから何年もかけて、日々の食事を重ねることで、形作られていくのだろう。きっと両親も手探りで、私を育てた食卓の形を作り上げていったのだろう。私達の家庭が将来どのような形になっているのかは分からない。しかしその将来の食卓が、ささやかでも幸せな場所となれるように、今出来ることを少しずつやってみよう。

#わたしの自立

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最初で最期の心斎橋アセンス。

人生とは、ままならないものである。

数年前にインターネット上で話題になっており、いつか読みたいと思っていた本を、心斎橋アセンスの本棚で見つけた。ジョン・ウイリアムズ著『ストーナー』。100年前のアメリカに生まれた1人の男の一代記である。白いカバーにシンプルな書体で書かれた題名に、思わず手を伸ばした。2800円という値段に一瞬躊躇するも、これも何かの縁だと思い購入した。

アセンスという本屋はツイッターで知った。本に対するコメントが暖かく、ホームページで見る店内の様子も素敵だったので、いずれ行きないなと思っていた。お店を知ってしばらく経ったある日、「2018年9月30日をもって全面閉店する」という主旨のツイートが。これは行かねば、と思った。

電車に乗って約1時間。観光客で溢れる大阪難波の街を歩き、本屋を目指す。さほど大きくもないビルの三階にアセンスはあった。一階は派手なポップがうるさいドラッグストア。以前はこの一階も本屋だったらしい。
二階に上がると、そこは外の喧騒とは別世界が広がっていた。静かな空間に、選ばれた本たちが、読書に出会うのを待っていた。さほど面積は広くない。並んでいる本の数も多くはない。しかし、意図を持って並べられているのが一目で分かる本棚に、私の気分は自然とあがった。サイン本や画集の棚も充実している。そして文芸棚。並ぶ本が好みにドンピシャ。読んでみたいと思っていた本や、タイトルを一目見て面白そうと思える本が並んでいる。本棚ごと全て読みたい、そう思った。ああ、もっと早くこの本屋を、この本棚を知りたかった。
ストーナー』は、そんな本棚の一冊であり、同著者の『ブッチャーズ・クロッシング』と並んでいた。『ストーナー』が実際に本屋で並んでいるのを見るのは、初めてのことだった。運命的な出会いとも言えなくもない。

単行本をレジに持っていく。カバーをかけるかどうか問われ、普段はカバーはかけない派だが、せっかくだから記念にと思いお願いする。店員さんが丁寧に、白いカバーをかけてくれた。

こんな素敵な本屋さんが閉店になってしまうのか、と思った。なんとなく寂しく感じる。それと同時に、ひとりの本屋好きとして、本は実店舗で買おうと思った。出来るだけ地元の、潰れたら一番困ると思う本屋で買おう。

今の時代、インターネットで本を買うのは簡単だ。しかし本屋で本を買うという体験は、「購入」ボタンをクリックする以上のものがあるはずだ。私は、消費者として、読書としてしか本や本屋とは関わることができない。だからこそ、消費者として出来ること、応援したい店舗にお金を使う、ということを意識していきたい。