読書録 地方生活の日々と読書

趣味が読書と言えるようになりたい。

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初任給で買った本。『衣更着信詩集』

 金曜日の夜だからビールを飲まないといけない気がする。
 そんな社会人1年生の夜。
 プルトップを開け、アルミ缶を傾けると、タンサンが喉を駆ける。

 ビールを飲みたい、思いつつ飲む発泡性リキュール。

 ゴールデンウィークからのダメ人間モードで、すっかりブログの更新をサボっている。
 台風が過ぎ一日。関西の田舎町は湿度が一気にあがった。麦わら帽子をかぶってランドセルを背負った女の子を見た。夏は近い。
 夏といえば、近未来のひと夏の避暑を描いた長編小説『シュンポシオン』を読んだ。著者は倉橋由美子。倉橋ワールドの毒にあたってしまった。どうあがいても登場人物たちのようなアッパークラスな生活には縁がなさそうだ。彼らはしょっちゅうシェリー酒やらワインやらを飲んでいる。比べて。何の後ろ盾も資産もない上に、社会の中でで器用に生きられない自分が嫌になる。

 初任給。さて、皆さんは初任給で何を買いましたか。
 今までの感謝をこめて両親や祖父母にプレゼントを贈るべきなのかもしれない、とは思う。だが現実は、プレゼントを贈れるほどもらってないよと同期と愚痴り、世代間の不平等や将来の非安定性を思って貯蓄に励む、といったところ。
 それでも自分に甘甘な私は、自分へのプレゼントと称して一冊だけ本を買った。
 買ったのは現代詩文庫の『衣更着信詩集』。一生に一度の初任給。一生大事にできる本を買おうと思い、好きな詩人の詩集に決めた。
 一生大事にすることを誓いつつ、インターネット上の古本屋のタイトルをクリック。お値段は定価の倍ほど。古書価格が新書価格を上回る本を買うのも、実は本書が初めてだ。
 届いた本の状態は良好。帯に、透明のカバーに、スリップもついている。見せびらかしたいので写真を載せる。
 
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 『通勤電車で読む詩集』という詩のアンソロジーで(この新書サイズの詩集も大好きだ。持っている本がぼろぼろになってきたので2冊目の購入を考え中)、衣更木信という詩人を知った。その詩集に載っていた詩は一篇だけだったが(『孤独な泳ぎ手』)、その詩を舌の上で転がしているうちにもっともっと彼の詩を読みたくなった。何が良かったのか。それを説明するのは難
しい。その詩が、海を背景に命についてうたったものだったからかもしれない。私は海が好きだ。

 詩集を開く。目次を読む。題名に「海」という字が入った詩が多いことに気づく。嬉しくなる。
 

 今週末は積読の消化をしよう。
 『シュンポシオン』の毒抜きに、とりあえずこの詩集とエリック・ホッファーの自伝でも読もうと思う。

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