出先で本を買う 『幸福な生活』百田尚樹
用事があり都市に出た。
用事が終わり、高速バス待ちの30分の間に駅構内の本屋に寄った。
帰りの車内で読む本を購入するためだ。
迷いに迷って、バスに遅れてしまうという不安に後押しされた末、ようやく『幸福な生活』という文庫本を手に取る。
(同著者の長編『モンスター』の感想もよろしかったらどうぞ(小説『モンスター』 百田尚樹 - 読書録))
『幸福な生活』
短編集かと思ったらショートショート集だった。高速バスの中で良い感じに読了。
短い話が19編も詰まったこの本だが、すべての作品に最後の一行の会話文「」に強烈なオチがついている。
表題作『幸福な生活』、オチまで読めば分かるがタイトルにまで深いアイロニーが利いている。
作品の中には先が読めるものもあるが、先が見えてもそれでも、いやそれだからこそ、先へ先へとページをめくる手が早くなるのがこの著者の凄いところ。
SFテイスト(『雪女』)あり、ホラーテイストあり(『深夜の乗客』)、私の好きな本当に怖いのは人間だよテイストあり(『夜の訪問者』『豹変』『ビデオレター』)、とにかくいろいろな方面からの面白さを堪能できる。
特に一番好きだったのは『痴漢』。爽快なオチが待ってます。
タイトルが強烈な『ブス談義』も、著者の長編『モンスター』を彷彿させて面白い。
ほんと内容について語れないのが惜しい。私の要約力ではネタばれになってしまう。
解説によれば、著者はあの探偵ナイトスクープ(大好き)の前口上を書いた構成作家でもあるらしい。面白さに納得。
都会の図書館へ行ってきました。
ところで、用事の予定より早く着いてしまい、時間までの間、某大学の文学部にも通じる巨大な図書館を訪れていた。
その図書館へ行くのは初めてではないが、最近改築したらしく、以前訪れた際とは内装や本の配置が大きく変わっていた。明るく広い空間には多数の自習スペースがあり、フリーで使用できるPCも充実している。
しかしなんといっても羨ましいのは見事に揃った文庫・新書コーナーである。
ずらっと並んだ新潮の海外文庫。
私の通う理系地方大学付属図書室には、専門書や論文以外の本や雑誌はほとんどない。機能を考えれば当然だが、読書好きとしては少し寂しい。
なので普段は市立の図書館に通っているのだが、その図書館では年季の入った本は閉架棚に移されてしまうので気軽に見ることができない。
一方この都会の大学図書館ではカバーのないハダカの文庫本の背表紙が、なかにはボロボロになりながらも美しく整列している。しかも棚にはまだまだ余裕があり、未来のあと何十年分もの本を収納する構えを見せている。
いいなあ、読みたい本、いっぱいだよ。
そしてこれからも次々と面白い本が生まれてはここに並んで行くのだろう。
とりあえず、『七瀬ふたたび』が読みたかった。(そういう気分になってしまったのだからしょうがない)