読書録 地方生活の日々と読書

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『光文社古典新訳文庫ベスト・セレクション for teens』が欲しい、かもしれない

 タイトルそのままです。
 そろそろまた長編の海外文学を読みたい欲が出てきたこともあり、次のゴールデンウィークに読む本を物色していた。前回の長編外文読書は正月休みに読んだユゴーレ・ミゼラブル。『レ・ミゼラブル』は学生時代に挫折した本だった。過去に挫折した本を読み通すことは、普通の読書の楽しさにプラスして、読み切ったという達成感も得られて気分が良い。なので今回も、10年前に読み挫折したドストエフスキー罪と罰に再チャレンジしようと決めた。
 ところで『罪と罰』は、有名な小説である。いくつかの出版社から発売されており、どの訳で読むか選べる楽しさがある。私の読書はただの楽しみのための読書なので、読みやすそうな訳の本を選ぶことにした。そこで光文社古典新訳文庫である。
 手に取りやすい文庫本の出版年を調べると、新潮文庫版が1987年、岩波文庫版が1999年、光文社古典新訳文庫が2008年である。新しい訳の方が読みやすいだろうという短慮により、古典新訳文庫版を選ぶことにした。訳者は亀山郁夫さん。カラマーゾフの兄弟は亀山訳で読んでいるので、なんとなく安心感もある(と言いつつ確認してみると、岩波文庫版の訳者江川卓さんの訳のドストエフスキー地下室の手記』『悪霊』で読んだことがあった)。
 学生時代なら上下巻で2000円を切り一番安くつく新潮文庫版を選んでいただろうことを考えると、なんだか少し悲しい。

 そんなこんなで光文社古典新訳文庫の『罪と罰』を調べていると光文社古典新訳文庫ベストセレクション for teens』なるものを見つけてしまった。
 プレスリリースによると以下の通り。

2021年9月に創刊15周年を迎えて“15歳”となる『光文社古典新訳文庫』。同年代の10代に向けて、300を超えるラインナップの中からはじめて触れるにふさわしい名作を厳選して、20冊のBOXセット「光文社古典新訳文庫ベスト・セレクション for Teens」をつくりました。

光文社古典新訳文庫 ベスト・セレクションforTeens

光文社古典新訳文庫 ベスト・セレクションforTeens

  • 発売日: 2021/04/05
  • メディア: 大型本


20冊は次のラインナップである。解説の小冊子もついているらしい。

・『リア王』(シェイクスピア安西徹雄訳)
・『車輪の下で』(ヘッセ/松永美穂訳)
・『ちいさな王子』(サン⁼テグジュペリ/野崎歓訳)
・『飛ぶ教室』(ケストナー/丘沢静也訳)
・『黒猫/モルグ街の殺人』(ポー/小川高義訳)
・『ロビンソン・クルーソー』(デフォー/唐戸信嘉訳)
・『秘密の花園』(バーネット/土屋京子訳)
・『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編』(О・ヘンリー/芹澤恵訳)
・『若草物語』(オルコット/麻生九美訳)
・『崩れゆく絆』(アチェベ/粟飯原文子訳)
・『虫めづる姫君 堤中納言物語』(作者未詳/蜂飼耳訳)
・『変身/掟の前で 他2編』(カフカ/丘沢静也訳)
・『老人と海』(ヘミングウェイ小川高義訳)
・『フランケンシュタイン』(シェリー/小林章夫訳)
・『ヒューマン・コメディ』(サローヤン/小川敏子訳)
・『オリエント急行殺人事件』(アガサ・クリスティー/安原和見訳)
・『怪談』(ラフカディオ・ハーン南條竹則訳)
・『罪と罰』〔全3巻〕(ドストエフスキー亀山郁夫訳)

 見つけた瞬間欲しい、と思った。10代向けだろうが何だろうが、欲しいものは欲しい。発売は4月1日。思わずネットで予約しようとしたが、その前に一晩考えることにした。
 改めてラインナップを見ると、18作中8作は読んだことがあったり別の出版社のものを持っていたりする。正直、自分からは手を出さないだろうなという本もある。もちろん、自分では選ばない本を読むきっかけとなるいうのも、このようなセットの大きなメリットではあるのだが。
 悩みに悩んだ末、このセットを買う代わりに、まずは私が読みたい光文社古典新訳文庫を20000円分考えてみようというところに落ち着いた。ちなみに上記セットは17595円である。
 そして光文社古典新訳文庫のホームページから選んだ本が下記である。

罪と罰 1~3(ドストエフスキー
感情教育 上・下(フローベール
女の一生モーパッサン
・ワーニャ伯父さん/三人姉妹(チェーホフ
虫めづる姫君 堤中納言物語(作者不詳)
・死刑囚最後の日(ユゴー
・世界を揺るがした10日間(ジョン・リード)
・母アンナの子連れ従軍起(ブレヒト
ロビンソン・クルーソー(デフォー)
・新アラビア夜話(スティーヴンスン)
・マダム・エドワルダ/目玉の話(バタイユ
高慢と偏見 上・下(オースティン)
・グレート・ギャッピー(フィッツジェラルド
・読書について(ショーペンハウアー
善悪の彼岸ニーチェ

 19冊で19796円。どうでしょうか。20000円分選ぶ作業はとても楽しかった。これ面白そう、この本は面白かったなと考えるうちにあっという間に時間が経つ。この中ではバタイユ『マダム・エドワルダ/目玉の話』(中条省平訳)のみ既読。旧訳(眼球譚生田耕作)も含め、何度か図書館で借りて読んでいるので、もう買ってしまおうかと思う。

↑新訳はリズムが良いのでおすすめです。『目玉の話』、なかなかリアルでは他人に勧められない小説ですが、実は大好きな物語。

 さて買おうか、とネットストアのカートに入れたのはいいのだけれど、選ぶ過程でとあることに気づいてしまった。
 なんと古典新訳文庫、物にもよるが電子書籍で半額程度の値段で買えてしまうのだ。なかには三分の一ほどのものもある。ここで私の貧乏性が頭をあげる。どうしよう。電子書籍なら倍の本を買えるのか。これは大きい。しかしこの古典新訳文庫、装丁が素敵なので、自分の本棚にずらっと並べておきたいという気持ちもある。「古典」ということもあり、再読にも耐えうる本たちだろうし、物理本でもっていても良いと思う。ただ一方で本棚のスペースは有限だ。
 うーん、悩ましい。
 悩んでいるうちに、そういえば光文社古典新訳文庫を一冊積んでいたことを思い出した。
 プーシキン『大尉の娘』。とりあえず本を読んでから考えることにしようと思う。